火石団地 払下げ完了、国道340号改良ルートに/住田町

▲ 今後は道路用地となる火石団地敷地内=世田米

 住田町世田米の応急仮設住宅火石団地は全13戸の払い下げが完了し、国道340号の改良ルートとなるため今月中に土地が県に引き渡される。陸前高田市などの被災者を受け入れ、全国的にも注目され続けた町独自の木造住宅は撤去が終わり、今後は各地で住居などとして各地で再利用が進む。東日本大震災発災からあすで6年を迎える中、住田の後方支援拠点の一つが新たな整備段階に入る。

 

木造仮設は再利用

 

 地元の木材や加工技術を生かそうと災害時に使える木造仮設住宅の検討を進めてきた町は、震災を受けて独自に木造仮設住宅整備を即決。町営住宅や旧幼稚園の各跡地、旧小学校の校庭を利用し3団地に計93戸を整備した。
 すべて戸建て型の2LDKで、風呂やトイレを完備。カラマツ材の杭基礎で、土台や柱、床にはスギの板や集成材を用いた。壁は断熱材を木材で挟む構造。陸前高田市とのアクセスに恵まれた火石は、3団地の中で最も早い23年4月25日に完成した。
 これまで、陸前高田などで被災した14世帯が利用。敷地内は道路改良整備用地として活用される計画がある中、昨年10月までに入居者がゼロとなり、供与終了を迎えた。
 火石付近の国道340号は、陸前高田市と住田町を結ぶ重要なルートだが道幅が狭く、以前から改良が求められていた。団地敷地内に新たな道路が設けられ、世田米保育園前の国道107号や世田米商店街につながる交差点に接続する。
 町は3年前から、住宅再建に至った入居者らに仮設住宅の払い下げを実施してきた。火石に関しては、かつての入居者の中で住宅の再利用希望がなかったことから、一般住民や法人も対象に含め、昨年秋に申し込みを受け付けた。結果、定数を大幅に上回る76件に達し、町外からも希望が寄せられた。
 選定では、まず町内を最優先とし、4人(法人1団体含む)を決定。さらに東日本大震災で被災し、住まいとして活用を考えている気仙両市などの6人を選んだ。残り3戸は、住居利用希望者の中で抽選を行った。
 撤去作業は昨年12月から本格化し、9日の敷地内は13戸すべてが姿を消した状態となった。町は今後、水道管撤去作業などを行い、今月中に道路整備を担う県に引き渡す。
 町内の木造仮設住宅は現在、世田米の本町(17戸整備)と下有住の中上(63戸整備)の2団地体制。町によると、今月7日時点での被災者利用は本町が10世帯27人で、中上が17世帯38人。23年春の3団地整備時には全戸で利用があり261人が暮らしていたが、発災から6年を迎え4分の1に減少した。
 被災者に加え、中上の10戸、本町の3戸で地域おこし協力隊員や警察官、教員らが利用。入居者が減少する中、交流・定住人口拡大策としての活用の関心も高まっている。
 陸前高田市の土地区画整理事業など、被災地の住宅再建事業完了までは数年を要する。町では当面2団地体制を継続するが、将来的には本町に集約させる方針も示す。