補助生かし基盤整備、34年度は20万本規模に/住田町林業審

▲ 新年度の林業振興策を確認した審議会=住田町役場

コンテナ苗生産拡大へ

低コスト造林も検討

 

 住田町林業振興審議会(会長・枛木澤光毅気仙地方森林組合長、委員13人)は24日、役場町民ホールで開かれた。平成29年度の町有林財産造成事業を協議し、原案通り承認。このうち町が国とともに補助金を交付して行うコンテナ苗生産基盤整備では、町内に育苗施設などを整備し、34年度には現状の約5・6倍に当たる20万本余りまで拡大し、需要増に対応する環境を整える。再造林促進を見据え、低コスト化のあり方も検討する方向性を確認した。

 同審議会は町長の諮問に応じて地域林業振興に関する事項を調査審議する組織で、この日は町議、農林業団体代表者、農林業従事者らで構成する委員9人が出席。多田欣一町長は「木材産業は少しずつ日の目を見るようになっている状況。今後も森林資源を有効に活用し、産業システムの充実・強化が重要」とあいさつした。
 協議事項は町有林財産造成事業と、国による森林・林業再生基盤づくり交付金事業の2点。いずれも原案通り承認した。
 このうち、交付金事業では新年度、コンテナ苗生産基盤整備を行う計画。事業実施主体は県山林種苗協同組合で、町内で苗木生産を手がける地元2業者が担う形となる。生産規模拡大を目的としており、29年度の生産量見込みは3万7000本だが、基盤整備によって34年度には5・6倍となる20万6000本にまで増やす。
 コンテナ苗は専用容器で育て、ビニールハウス内での管理が可能。均一的な形状の根鉢であるため、専用器具で根に土がついたまま簡単に植栽ができる。時期も普通苗は春先と秋に限られていたが、コンテナ苗は春から秋の間に可能で、伐採と造林の一貫作業に用いられやすく、全国的にも普及拡大が注目されている。
 基盤事業によって、育苗施設1棟(246平方㍍)、培土圧入機、散水装置、コンテナ苗抜取機、アルミコンベアなどを新たに導入。事業費は1422万円で、このうち国補助が658万円、町補助が132万円となっている。
 29年度の町有林財産造成事業は町森林整備計画、森林経営計画、町総合計画、森林認証グループ管理計画等に基づき、町有林の適正な管理に努める。具体的な考え方は▽新植(再造林、拡大造林、樹種)▽下刈、除伐、除間伐▽間伐▽素材生産▽森林作業道等開設事業▽シカ、カモシカ被害対策▽森林病害虫対策▽低コスト造林──の各項目別にまとめた。 
 低コスト造林は、新年度から新たに加わる項目。林業収益性の悪化などを受け、町内私有林の再造林率は22%と、県平均の30%を下回る。国では造林費用低減に向け、伐採から植栽までの一貫作業システムの構築を進めている。
 こうした中、町は私有林での再造林拡大のモデルとなるべく、町有林での一貫作業実施に向けた協議・検討を進める方針。住田素材生産業協同組合や気仙地方森林組合などとともに、持続可能で低コストにつながる造林のあり方を探る。一貫作業に向けては、業者との契約手法や、森林認証材の取り扱いなどに調整課題があるとされる。
 また、新年度までは1㌶あたりの植栽本数をスギ3000本、カラマツ2500本を基本とする。30年度以降は収益性を考慮し、植栽本数を減らした低密度植栽や、植栽時期が長いコンテナ苗の採用も進めることにしている。