〝高田の顔〟形成へ一歩、個店などへ土地引き渡し/かさ上げ地商業エリア(別写真あり)

▲ 引き渡しがスタートしたかさ上げ地の商業エリアで現地確認する商業者ら=陸前高田市高田町

 陸前高田市の高田地区土地区画整理事業で、中心市街地再生に向けたかさ上げなどの整備が進む商業エリアの宅地引き渡しが、27日に初めて行われた。エリア内では核となる大型商業施設「アバッセたかた」が来月27日(木)の開業に向け先行して整備が行われており、今後は個店の建築も本格化し、〝陸前高田の顔〟が形づくられていくことになる。現地確認に赴いた地権者や借地人たちは、自らの店の再建や新設、まち全体の将来を頭に描きながら、かさ上げ地での大きな一歩を踏み出した。

 

 同市の中心市街地を形成していた高田町は東日本大震災津波で壊滅的な被害を受けたのち、海抜約10~12㍍までかさ上げするなどの再整備が進む。昨夏には新しい市街地の核となる市立図書館併設のアバッセたかたが先行して着工し、来月のオープン(図書館は6月予定)を目指している。
 同日の引き渡しは、午前がアバッセ近隣の商業エリアⅠ(1万1602平方㍍)、午後は本丸公園東側に位置する大町地区のかぎ型道路周辺を中心とした同Ⅱ(1万3501平方㍍)に分けて行われた。
 このうち、エリアⅠの説明・引き渡しには地権者や借地予定者16人が参加。はじめに市役所で説明会が行われ、熊谷正文復興局長は「今後も周辺道路の整備などがあり当面の間はご不便をかけることになるが、皆さんの早期出店と一日も早くにぎわいが戻ることを願っている」と、あいさつした。
 出席者は、市と、区画整理事業を担うUR都市機構から、引き渡し前後の留意点や周辺道路の整備スケジュールについて説明を受けたあと、現地に移動。
 市とUR職員立ち会いのもと、境界標や水道止水栓、汚水枡などの位置を確認。テントで引き渡し確認書に記名・押印するなど、それぞれに節目の一歩を踏み出した。
 大型遊具などが置かれる「まちなか広場」そばの借地で、ネイルサロンを構える予定という津田千亜紀さん(33)=同市広田町=は、「思っていたよりも明るい感じの場所。今年の秋に着工し、来年中にオープンできれば」と期待を膨らませていた。
 被災後、25年4月から竹駒町の仮設・陸前高田未来商店街で「洋菓子店kankyu」を営んできた菅野秀一郎さん(41)は、震災前に近隣に構えていた商業者とまとまってアバッセ近くで開店を計画。「いまの仮設店舗がオープンした4月23日に地鎮祭をしたいと考えており、年内にはオープンしたい」と決意も新た。「海と山と中心市街地とがセットとなった景観を多くの人に楽しんでもらえれば」と話していた。
 商業エリア内では、アバッセ周辺の道路が来月26日から、翌27日からはかぎ型道路などが供用開始となる見通し。アクセス利便が一定程度改善され、人の流れが活発化していくものとみられる。
 こうした中、説明会席上、市側は中心市街地における津波避難についても説明。津波注意報発表時、かさ上げ地より低い平地にいる人はかさ上げ地に、津波警報と大津波警報の際には、かさ上げ地からさらに高台に避難するよう呼びかけるとした。
 かさ上げ地から高台へ向かうルートのうち、現在は工事のため立ち入り禁止となっている鳴石線と東幹線については、避難時に通れるようにする。
 マップを作成し提供することとしており、かさ上げ地などの整備状況を踏まえながら、おおむね四半期に一度見直していく方針という。