新年度は救急と連携も、住民登録8200人超に/未来かなえネット

▲ 本年度の実績と新年度の方向性を確認した理事会=大船渡

 気仙地区内の医療機関などでつくる一般社団法人・未来かなえ機構(代表理事・滝田有気仙医師会長)の地域医療・介護連携ICT(情報通信技術)システム「未来かなえネット」は、住民参加数が29日現在で8200人を超えた。全国的にも高い加入率が注目を浴びる中、新年度は宮城県内や一関、遠野との連携拡大につながる取り組みに着手。救急車と救急センターをつなぐ情報オンライン化や、小児科相談ネットワークの実証実験も計画している。


 同機構は、28日夜に大船渡市盛町のシーパル大船渡で理事会を開催。理事や事務局関係者ら約20人が出席し、本年度の実績と新年度の事業計画の方向性を協議した。
 平成23年12月に国から選定された気仙広域環境未来都市構想に基づき、同機構は医療・介護・福祉の連携モデル構築を目指す2市1町の医療や介護、行政関係者らで一昨年4月に設立。気仙の各病院、医科・歯科診療所、介護事業所、調剤薬局などで、患者の各種医療情報を共有。業務効率化や、患者らのサービス向上を見据える。
 登録した住民がいつ、どこで診療・福祉サービスを受けたか、どのような薬を処方したかなどの情報を一元的に集約・管理し、参加機関相互で確認できる。住民側にとっては▽別の診療所などでの治療や薬の状況を説明する面倒が減る▽施設を移るたびに同じ検査を繰り返したり、同じ薬を重複することが減る▽災害時に情報が残り、治療・介護が継続しやすい──といったメリットがある。
 運用は昨年4月から始め、住民登録は一昨年12月から受け付けた。県がまとめる気仙の人口推計速報によると2月1日現在の3市町計は6万2401人である中、現在は8200人を超え、登録率は13%を超える。地域における介護力の向上や健康づくりにつながるイベントも重ねてきた。
 気仙にある医療、福祉関連施設数は100程度の中で、参加機関・施設数は4月には47となる。住民、機関・施設とも参加が増えるほどシステムの効果が発揮される形となっている。全国でも同様のシステムが運用されているが、多くは住民参加が1%前後にとどまっているという。
 こうした中、総務省のクラウド型EHR(医療情報連携基盤)高度化事業の運用モデルとして、未来かなえネットのシステムが選ばれた。気仙の住民は一関や気仙沼の医療施設、東北大病院の利用も多い中、コネクタサーバーなどを用いることで連携充実を図る。また、住田町民の利用が多い遠野の医療機関も見据える。
 新年度は、全国的にも珍しい救急車と救命救急センターの情報オンライン化を進める。救急車から搬送先の病院などに患者情報を伝えるシステムで、さらなる救命処置向上が見込まれる。現段階では大船渡、陸前高田の各消防本部が持つ救急車1台で5月から試験運用を始め、全9台での本格運用は9月を見込む。
 理事会では、東京の医療関連ベンチャー企業が手がける遠隔医療相談サービスと連携した実証実験を進める方針も確認。この企業は、平日午後6~10時に通信アプリ「LINE」などを用いてスマートフォンやパソコン、電話などで気軽に小児科医に相談できる会員制サービスを運営している。出席者からは、子育て世代の不安解消や救急医療の正しい利用への期待が寄せられた。
 このほか、新年度は▽病院と介護の情報連携シートの統一化▽訪問系の看護・介護サービスへのバイタル機器(体温、脈拍、血圧などの測定)の導入──も展開。健康診断結果の連携も見据える。
 滝田代表理事は「地域介護の集会などと合わせて参加を呼びかけており、浸透してきたという感はある。『患者さん』ではなく『住民の方々』にメリットがあるネットワークづくりを目指しているのが、今の段階では成功の要因と思っている。高齢者の参加比率が高いが、子育て世代、若い世代にメリットがある仕組みづくりも大事」と語る。
 参加申込書を気仙3市町の全世帯に配布するなど、さらなる住民参加拡大に力を入れる。問い合わせは、同機構(住田町保健福祉センター内、℡22・7261、土日・祝日除く)へ。