サル複合対策実施へ、目撃・農作物被害の増加受け/住田町(別写真あり)

 サルによる農作物被害の報告が増加している中、住田町鳥獣害防止総合対策協議会は本年度、複合的な対策に乗り出す。平成28年度の被害報告件数は前年度の3倍増に達したほか、根菜や果樹など幅広い作物で被害がみられた。生息域調査や生態の特徴を学ぶ研修会などを行いながら、官民一体となった取り組みを進める。

 

 住田町上有住の東北横断自動車道・滝観洞インターチェンジから滝観洞につながる県道沿いの大洞自治公民館付近で4日午後、10頭ほどのサルの群れが確認された。農地に加え民家が立ち並ぶ地域で、車両が近づくと冬期間の通行止め措置で施錠された道路に逃げ、周辺の様子をうかがっていた。
 付近の住民によると、サルは数年前から頻繁に現れ、JR釜石線上有住駅近くの線路沿いを移動したり、滝観洞の入り口前に架かる風恋橋付近でも目撃される。「群れでいることが多い。人に危害を加えたという話は聞かないが、近づくと歯をむき出しにして威嚇するような仕草をとる」と話す。
 これまで地域内ではカキやカボチャを食べたり、ジャガイモを掘り返すといった被害があったという。この住民は「この辺だけでなく、五葉や上有住の各地で見る。一つの群れとは思えず、いくつかあるのでは」とも語る。
 町がまとめた28年度の鳥獣農作物被害状況(暫定値)によると、サルは24件で前年度の8件から大幅に増加。全被害報告333件のうち、ニホンジカ173件、ハクビシン53件、カモシカ48件に次ぐ多さで、クマやアナグマ、カラスを上回った。
 被害作物は大豆やサツマイモ、トマト、イチゴ、タマネギなど広範に及ぶ。町では「早めに被害防止策をとっていかないといけない」と、危機感をにじませる。
 こうした中、町鳥獣害防止総合対策協議会では本年度、新たにサル複合対策に取り組む。専門機関職員らによる協力を受けながら生息域調査を行うほか、住民らを対象に生態・対策などを学ぶ講習会などを開くことにしている。
 町内ではこれまで、主にシカやカモシカ、ハクビシンによる被害が目立っていたが、近年は上有住でサル被害が増加。周辺自治体ではイノシシの被害も深刻化しており、さまざまな防止対策を展開する必要性が高まっている。
 鳥獣被害は営農意欲の減退や耕作放棄地の増加にもつながるとされ、被害作物量や金額以上に深刻な影響を及ぼす。町でも25年度から鳥獣被害対策実施隊が組織され、本年度は44人体制でシカなどの有害捕獲やパトロールにあたるが、今後は集落単位で足並みをそろえた被害防止取り組みにも注目が集まる。
 町が先月まとめた36年度を目標年次とする第6次農業基本計画でも「集落機能の保持と農地の多面的機能の維持」の中で鳥獣害等防止対策を盛り込み、第5次にはなかったサルやイノシシに言及。他市町村の事例を参考にしながら、地域事情や住民生活にあった対策を講じる方針を掲げている。