里山の恵みへ 広がる赤い炎、下有住・蕨峠で山焼き/住田町(動画、別写真あり)

▲ 芽吹きを促す赤い炎に包まれた丘陵地=下有住・蕨峠町有地

 住田町の「すみた里山を守る会」(紺野昭二会長)は11日、下有住字奥新切地内の蕨峠町有地で山焼きを行った。会員らは自生するワラビなどの芽吹きを促そうと火を入れ、ゆらめく赤い炎に里山の恵みへの期待を込めた。 守る会は、里山地域の有効活用と環境整備を図ろうと、伝統的な山焼き手法の取得と継承を目指す団体。平成20年に結成した。山菜栽培にも力を入れ、遠野市境に位置する蕨峠町有地の一部を実証区域とし、山焼きとワラビ発生状況調査などに取り組んでいる。
 山焼き作業は、前の年に伸びた雑草などを焼き、新たな草花や山菜が芽吹きやすい環境を整えるもの。例年通り3月から実施日を探っていたが、同月は峠周辺や町有地につながる県道に雪が残っていたといい、昨年に比べて20日ほどずれ込んだ。
 作業には、守る会や町役場農政課の職員ら10人余りが参加。実施区域内に入ると、バーナーなどを使って下草に着火した。
 風にあおられた炎は「パチッ、パチッ」という音とともに、赤くゆらめきながら広がった。一帯に伸びていたカヤやササの葉、昨年成長したワラビの枯れ葉などを燃やした。
 しばらくの間、周辺を白い煙が包み込んだあとは、着火前とは一変した真っ黒の地面が広がった。地面からは今後、ワラビを中心に山菜の自生が見られるようになるという。
 作業に参加した上有住の高萩久之さん(73)は、「奥まった場所に入り込むのではなく、安全なところで山菜を収穫するためにも、山焼きは必要。やるとやらないとでは大きく違う。このまま寒くなることなく過ぎてくれれば、また一面に広がる」と笑顔で話し、期待を込めた。
 例年5月には、山焼きを行った約2㌶の丘陵地一帯は〝ワラビの森〟と化す。守る会では5月中旬から下旬の中で収穫期を見定め、一般の人に収穫してもらう観光農園事業の実施を計画する。