「高田小案」に理解求める、当局が立面・平面図提示/陸前高田市議会復興対策特別委員会
平成29年4月20日付 1面

陸前高田市議会の復興対策特別委員会は19日、同市役所で開かれた。市役所新庁舎の建設地選定をめぐり、当局は3月定例会で否決された高田小跡地案について、これまでの議論や市民の要望に配慮した「イメージ図」などを改めて提示。戸羽太市長は「高田小案でなんとかご理解いただきたいと思っている。これまでの皆さんのご意見をふまえ、『こうしたらいいのでは』という〝絵〟を描いたので、改めてご議論いただければ」と述べた。一方、現庁舎位置での建設を求める議員たちは、独自に市役所建設基本構想案を取りまとめ、同日はこれに関しても意見を交わした。
現庁舎推す議員から提案も
当局から示されたのは、高田小跡地に庁舎を建てた場合の配置イメージ、立面、平面、断面の各図。戸羽市長は「建設位置の可能性がある場所として、3カ所を提示した。しかし中身を詰めていく中で、現庁舎位置ではどうしても物理的に難しい部分があると分かってきた」と説明。
そのうえで、委員から今後の検討の進め方について問われた市長は、「高田小跡地案には7人の議員の方が反対されている。7人の方にご納得いただくため、われわれに何ができるか考え、歩み寄れるようなアイデアをお示ししながら、お願いしていくしかないと思っている」と述べた。
当局によると、敷地面積は1万2000平方㍍。造成高はTP(東京湾平均海面)16・4㍍とし、復興事業の予算を使って盛土を行う。庁舎面積は震災前の規模と同じ5500平方㍍を基本に、災害時の状況把握などを行うため、建物は7階建て(地上25・5㍍)とする。
建物の高層化により、1階あたりの面積は震災前と比べて800平方㍍縮小し、今後の職員数の動向にも柔軟に対応できるようにするという。
駐車台数は来客用80台、公用車50台、職員用70台分を確保。入り口の南側のり面にスロープを設置する。
同日は図の配布と概要説明のみで、質疑応答などは次回の復興対策特別委で行うとした。
また、この日は大坂俊(翔英会)、畠山恵美子(同)、三井俊介(新風)、鵜浦昌也(創生会)、福田利喜(同)、蒲生哲(無会派)、中野貴徳(同)の7議員が連名で提出した市役所新庁舎建設の基本構想案についても議論。同案では、議員がそれぞれ行った市民への聞き取りや当局とのやりとりをふまえ、「現庁舎位置が最適」とし、目指すべき庁舎の機能や規模などが盛り込まれている。
人口推計や総務省の基準をもとに、新庁舎は延べ床面積4000平方㍍(1階あたり1000平方㍍)の4階建て以下と想定。現在の仮設庁舎のうち1、2号棟を残し、他の公共施設を使用することで、新庁舎完成後の足りないスペースを補いつつ、事業費の削減を目指す。駐車場は、半地下化・立体化で確保することを提案した。
当局はこれに対し、「(庁舎完成を目指す)平成32年度時点での職員数は224人。この人数が働けるスペースは最低限必要」と回答。さらに市長は「10年、20年後に職員が減った時は、庁舎の空いたスペースをほかの団体等が有効活用できるようにしたい」とし、「減少後の人口だけを基準に規模を決めるのは難しい」という考えを示した。
また、同案の中で示された庁舎配置イメージ図について感想を求められた岡本雅之副市長は、敷地内の動線が悪く、車が1台分ずつしか通行できないことや、立体駐車場の半地下部分はスロープを設けるとさらに狭くなること、構造上の問題からコストがかさむことなどを指摘。
ほかの公共施設を庁舎として利用すれば、「復興を円滑に進めるために必要な部局間の連携が滞る」とし、「ご提案いただいた形での実現は難しいのではないか」と述べた。
当局退席後、委員たちは同基本構想案に関する議員間討議も実施。
高田小案に賛成する委員は、「②案(現庁舎位置)が現実的ではないという根拠が当局から数多く示されたと思うが、これからどう落としどころを探っていくのか」と疑問を投げかけたが、反対の立場を取る委員は「②案(現庁舎位置)が最適ではないにしろ、高田小よりは適地だと思っている」と述べ、あくまで現庁舎位置案で建設するためのアイデアを模索する姿勢を示した。
一方、「このままでは話が平行線のまま時間だけが過ぎ、国からの補助も受けられなくなる。もっと建設的に、『こうであれば納得できる』という意見を聞きたい」と訴える委員もおり、6月議会までに結論を出したいという焦りをにじませた。