にぎわい創出の拠点誕生、アバッセたかたオープン/陸前高田(動画、別写真あり)

▲ 新しい中心市街地に初めてオープンした商業施設「アバッセたかた」=高田町
誘い合わせて訪れた人たちが、笑顔で買い物=同

誘い合わせて訪れた人たちが、笑顔で買い物=同

 陸前高田市高田町のかさ上げ地に整備された「アバッセたかた」は27日、待望のオープンを迎えた。新しい中心市街地で初めて営業する商業施設となり、書店や飲食店といった専門店街に加え、スーパー、銀行、薬局、衣料品、携帯電話ショップなど、日常生活に必要な店舗が一通りそろった。同施設は、消費活動だけではなく、健康維持やコミュニティーづくりの場としての役割も併せ持つ。隣接する「まちなか広場」も同日、一部が供用開始されたほか、7月には市立図書館の開館も控えており、〝誘い合って行きたくなる場所〟の可能性は今後ますます広がっていく。

 

誘い合い、人集う場に

 

 アバッセたかたは鉄骨一部木造平屋建て。広さは7900平方㍍で、A~C棟と市立図書館からなる複合型商業施設として整備された。

 この日行われたオープニングセレモニーでは、A棟(専門店街)の運営を担う高田松原商業開発協同組合の伊東孝理事長が、「『アバッセにアバッセァ(一緒に行きましょう)』と言われ続けるよう、出店者一同、長く愛される施設づくりに努める」と決意を述べ、発災から6年以上の時を経て、ようやくこぎつけたオープンに万感の思いを込めた。

 施設の〝名づけ親〟である米崎町の及川裕喜さんは「アバッセに似た言葉を調べたところ、『アバンセ』というフランス語には『前へ進む』という意味があるそう。復興へ向け、前に進む足掛かりとなる施設になることを願います」と、意外なエピソードを紹介しながら、発展を願った。

 セレモニーには、同市出身の俳優・村上弘明さんも駆けつけ、祝福の言葉を述べたあと、午前9時に「オープン宣言」。今か今かと待ちわびた市民らが足早に店内へと向かい、出店者や顔なじみを見つけるたび、笑顔であいさつを交わし合った。

 同施設に出店しているのは22事業者。A棟には、書店や手芸店、菓子店、飲食店のほか、エステサロン、音楽教室、法律事務所など15事業者が出店。個別・集団リハビリが行える特化型デイサービスは、フィットネススタジオとして一般利用も可能となっており、市民の健康づくりに寄与する。

 B棟にはスーパーマーケット・マイヤと、ファッションセンターしまむら、クリーニングママ号、銀行ATM、ドコモショップなど、6年ぶりに本設営業再開を果たした店舗を含む6事業者が入り、C棟ではツルハドラッグが営業をスタートさせた。

 また、同日はJR大船渡線BRTの「まちなか陸前高田」が開業。市内からBRTを利用して同駅に降り立つ人の姿や、近隣の仮設住宅、災害公営住宅などから、徒歩でやってくる人たちも見られた。

 同町の仮設住宅に住む小松幸子さん(73)は「いい散歩コースができた」と喜び、手芸・洋品などを扱う「スタイル」でさっそく目当てのものを購入。町内の災害公営住宅に入居した小松さんの友人も、「今度、うちの集会所で手芸サークルを始めるから」と、広い店内を楽しそうに見渡していた。 

 ㈲スタイルは震災前、同町にあったショッピングセンター・リプルでも営業。これまでは、竹駒町の仮設商店街で店を続けてきた。同店代表取締役の新山統さん(41)は「ここからが新しいスタート」と語り、「お客さん同士が交流できるような場所にしたい。店で(ハンドメード品の)講習会もできれば」と、今後を展望した。

 多くの来店者が施設内を興味深く見て回る中、村上さんのトークショーなどが行われたパブリックスペースを指し、「ここでイベントも企画できそうだね」と話す市民もおり、施設の活用方法にも夢を広げていた。

 同施設屋外では30日(日)までと、5月3日(水・祝)~7日(日)まで、中心市街地の出店予定者らが「テント市」を実施。飲食物などを販売する。さらに、隣接する「まちなか広場」では大型遊具が利用できるようになり、7日まで連日、写真展や子ども向けの催し、ミニコンサートなども繰り広げられる。