移住者夫妻の門出祝う、住民手づくりの結婚式/広田町(動画、別写真あり)

▲ 結婚式会場の慈恩寺に向かう道中では、たくさんの地域住民が岡田さん夫妻を祝福した=広田町

 陸前高田市広田町の慈恩寺(古山敬光住職)で6日、関東から同町へ移住した岡田勝太さん(25)、美鈴さん(25)夫妻の仏前結婚式が執り行われた。地域住民らは、会場までの道中で迎え酒を勧めたり、式後に行われたお振る舞い会の料理を手作りしたりと、総出で新婚夫婦の門出を祝福。女性たちによる「道化」も登場し、長持ち行列をにぎやかに盛り上げた

 

にぎやかな長持ち行列も

 

 新郎の勝太さんは東京都出身で、広田町を拠点に活動しているNPO法人SETの職員。平成23年秋から陸前高田市に通い始め、大学卒業後の26年4月に同町へ移住した。自身が立ち上げた大学生向けの1週間滞在型研修事業「ChangeMak
erStudyProgram」の事業部長として、同事業の運営にあたっている。
 一方、神奈川県出身の新婦・美鈴さんは今年4月に移住。2人は今年2月に東京で結婚式を挙げたばかりだが、地元住民の「広田で昔ながらの結婚式をやろう」という声に後押しされ、2回目の式を執り行うことになった。
 結婚式の実行委員長を務めたのは、同町の佐々木幸悦さん(67)。新郎新婦は、親族と一緒に黒崎神社をお参りしたあと、佐々木さん宅で昼食を食べ、慈恩寺までの約300㍍を練り歩いた。
 道中では、地域の女性たちが風変わりな格好をして出迎える風習「道化」や、SETメンバーらによる長持ち行列などが披露された。行列に参加しない住民も、迎え酒を新郎新婦に勧めたり、楽しげな表情で行列を見守ったりと、地域全体で歓迎・祝福ムードを演出した。
 慈恩寺で仏前結婚式を挙げるのは、同寺関係者以外では岡田さん夫妻が初めて。宮城県登米市にある寳林寺の真壁大哲副住職が応援に駆けつけ、僧侶3人での式が粛々と行われた。
 式では古山住職が戒師(戒を授ける師僧)を務め、2人の将来が幸多いものであるよう祈願する啓白文を奉読。仏法僧の三法に帰依し、夫婦そろってその信仰と仏道の実践に精進することを誓う「三帰依の儀」や、戒師から授けられた〝寿珠〟を互いに交換して拝み合う「睦みの儀(寿珠の儀)」なども行われた。
 古山住職は、「松に古今の色なし、竹に上下の節あり」という禅の言葉を訓示として贈り、「慈恩寺を心のよりどころ、出発点として2人の心にしまっていてほしい」と呼びかけ。最後に、おめでたい功徳をあまねく広げることを願い、来場者全員で「四弘誓願文」を唱えた。
 このあと、本堂から大広間に会場を移し、住民手づくりのお振る舞い会がスタート。テーブルに並んだ料理も住民が腕を振るったもので、料理を作った人、行列を見守った人、買い出しに協力した人など、地域住民とSETメンバー合わせて200人以上がかかわり、岡田さん夫妻を祝う場を完成させた。
 実行委員長の佐々木さんは「沿道に地域の人たちが集まり、盛り上げてもらったことが一番。2人を祝福するという意味で良い場面をつくってもらった。広田の住民として認められつつあることが分かってうれしいね」と満足げな表情を浮かべた。
 勝太さんと美鈴さんは、「今はすごく幸せな気持ち。皆さんに祝ってもらい、改めてこのまちで生きていけたらと思いました」「こっちにきて1カ月だが、地域の皆さんによくしてもらっている。お茶っこしたり、仲良くしゃべりながら地域になじんでいきたいです」と笑顔。「楽しい家庭をつくりたいです」と声をそろえ、幸せそうにほほえみ合っていた。