いまだ983戸が生活、撤去済みは991戸に/気仙の応急仮設住宅

▲ 住民が退去し、撤去されるばかりとなった仮設住宅団地も増えてきたものの、すべての団地解消まではまだ時間がかかる=陸前高田市小友町

 東日本大震災の発生から、きょうで6年2カ月。大津波で気仙両市は甚大な被害を受け、住田町を含む各地域に応急仮設住宅が整備された。被災地では住まいの再建が進展を見せる中、平成28年度末までに撤去(一部を含む)された仮設住宅は3市町で25団地991戸。一方、4月末現在で61団地983戸が仮設住宅での暮らしを余儀なくされている。不自由な避難生活が長期化する中、恒久的な住まいに移るための支援、対策の重要性が日々高まっている。

 

震災から6年2カ月
支援の重要性高まる

 

 震災後、大船渡市には37団地1801戸、陸前高田市には53団地2168戸、住田町には3団地93戸の応急仮設住宅が整備された。4月末現在、大船渡市は15団地で216戸、陸前高田市は44団地で739戸、住田町は2団地で28戸が避難生活を送っている。
 独自で木造仮設住宅を整備した住田町では、28年度末までに世田米の火石団地13戸が国道改良整備に伴い撤去されたほか、下有住の中上団地でも7戸が解体された。中上では現在、さらに2戸の撤去が進む。
 大船渡市では26年度に「応急仮設住宅の撤去・集約化計画」を策定し、撤去・集約化を実施。28年度末までに16団地863戸の撤去を終えた。
 学校校庭は綾里中、盛小、大船渡北小、末崎小、末崎中、猪川小が昨年末までに復旧。大船渡、第一の両中学校では撤去工事を完了し、グラウンド整備工事を控える。
 29年度は、公園や市営球場、民有地内の14団地で撤去を進める。
 このうち、盛町の下舘下(民有地)、木町(佐倉里公園)、東町(公園)、舘下(同)、末崎町の大田(市営球場)、赤崎町の清水(民有地)、猪川町の久名畑(同)の7団地197戸は、3月末までに退去が完了。市によると、2月末現在で5団地に22戸が入居していたが、自力再建による新居や災害公営住宅、ほかの仮設住宅へ移ったという。
 7団地は現在、県による撤去工事の発注や、作業に着手した段階。市営球場は仮設住宅撤去後、観客席などの補修工事を予定している。
 このほか、大船渡町の富沢(公園)、下船渡(同)、猪川町の下権現堂(同)、前田(同)、猪川(同)、長谷堂(県有地)は今月末を退去期限とし、6月以降の撤去を計画。猪川町の下富岡(轆轤石教員住宅跡)は7月末の退去完了、8月以降の撤去を予定する。
 撤去、集約が進む一方、市内では防災集団移転促進事業や土地区画整理事業の兼ね合いにより、住まいの再建にまだ時間を要する世帯もある。
 市は30年度から、防集や土地区画、自力再建などで移転先が決まっているなどの要件に該当する人のみが仮設住宅に入居できる「特定延長」を受け入れる方針。これを控え、市は市応急仮設住宅支援協議会などの関係機関と連携し、みなしを含む仮設入居者の住まい再建に向けた支援を実施中。今後も特定延長の周知に努め、全入居者が恒久的な住居に移るための対応を図っていく。
 陸前高田市で28年度末までに解体が完了したのは、柳沢(小友町)、長洞(広田町)、町裏(気仙町)、二日市北側(同)、要谷北側(同)の5団地と、二つの福祉仮設住宅(グループホーム)の計7団地108戸。
 市が同年3月に示した応急仮設住宅の撤去・集約化計画において、昨年度内の解消を目指していた気仙小仮設団地をはじめ、米崎町の高畑、小友町の矢の浦、横田町の三日市など計9団地でも、入居者は退去済み。あとは建物の解体を待つばかりとなっている。
 また、撤去集約の最優先に位置付けられる学校用地のうち、児童生徒が在籍する米崎小と広田小、矢作小は今年9月以降、旧矢作中(気仙中生が使用)と旧横田中(横田小生が使用)、竹駒小は、来年3月からの解体を計画。現在は入居者対象の説明会を開き、移転先の意向などを聞き取っているという。
 計画はおおむね順調に推移する一方、同市の人口のうち、1割近い1835人が今も応急仮設住宅で暮らす。こうした状況から、高田町の栃ヶ沢団地では地権者の理解を取り付け、解体時期を本年度上半期まで1年延長とした。
 同市では、計画された災害公営住宅11団地(883戸)のうち、米崎町の脇の沢団地(60戸)をのぞく10団地で入居を開始。脇の沢でも7月ごろから入居可能となる予定。
 市はこれに伴い、仮設からの移転をさらに促進したい考え。同市の場合、災害公営住宅へ入居しても、自宅再建に関する補助金申請要件には影響がない。しかし、市の担当者は「仮設から移れない方にはさまざまな事情があり、一気に災害公営へとはいかないのが現状」という。
 高田・今泉地区の区画整理事業においては、一部エリアの事業完了時期が32年度まで延長。住宅再建に影響が出る被災者もいる。
 市は今年、県に対し「特定延長の導入時期繰り下げ」と「仮設住宅の供与期間の1年延長」を申し入れ。県と国とで協議が行われている。
 しかし、すべての災害公営住宅が完成間近となった中、国がこうした事情を斟酌する可能性は低いものとみられる。