「小さな拠点づくり」始動、困りごと解決へ新組織/住田町

▲ 新組織発足に向けた意見交換会=下有住地区公民館

 住田町による本年度の新規事業「小さな拠点づくり」の取り組みが、地区ごとに動き出している。世田米、大股、下有住、上有住、五葉の各地区で住民が主体的に地域協働組織を立ち上げ、困りごと解決や活気につながる活動を展開。町は地域交付金として、各地区に年間80万円を支給する。用途に制限は設けず、次年度への繰り越しを可能とするなど、自主性を尊重。持続可能な地域社会づくりにつながるか、取り組みの行方が注目される。

 

住民主体の活動を支援

5地区に地域交付金


 町内人口は4月末現在、5700人余りで、年間100人程度のペースで減少し、高齢化も進行。地域の担い手の減少や、生活を営むうえでの困りごとの増加が懸念される。担い手となる住民にとっては、さまざまな地域活動をかけ持ちするなど「負担感の増加」も課題になりつつある。
 こうした中、町は「小さな拠点づくり」を進めることで、本来の住民自治の再興を描く。「小さな町でなければできないこと。小さい町だからできること」の実現を目指す。
 各地域によって困りごとや課題は異なる中、住民にとって身近な組織が解決することで「暮らし満足度」の向上を図る。その役割を、地区ごとに動き出す地域協働組織が担うとしている。
 下有住地区公民館(金野純一館長)では10日夜、組織発足に向けた意見交換会が開かれた。住民ら約20人が出席し、金野館長は「まずは活動の受け皿をつくらなくては」などとあいさつした。
 引き続き、町企画財政課の担当職員が、施策の概要を説明。地域協働組織は、各地区に配置されている地域おこし協力隊や集落支援員と連携。行政に加え、町内で活動しているNPO団体からも、運営面などでサポートを受ける。組織は、住民だれもが構成員になることができ、地域の身近な分野で役立つ活動を進める。
 出席した住民からは「80万円ならば、農道の補修など、一つの事業で終わってしまうのでは」との声も。これに対し町側では、各組織の自主性を尊重する考えを示した一方、買い物に困っている住民を支援するなど、これまでなかなか地域団体や行政の支援が届きにくかった分野への予算活用に期待を寄せた。
 町は、この事業を少なくとも平成31年度までは続ける計画で、年度内で使い切らなかった予算を次年度に繰り越すこともできる。32年度以降に関して、町側は「いい取り組みと総括できれば、ずっと続けていきたいと考えている」と答えた。
 住民からはこのほか、地区公民館に隣接する場所に消防屯所を建設していくべきとの意見も。防災面など、町主導によるハード面での「拠点づくり」も推進すべきとの声が複数寄せられた。
 下有住地区では、6月上旬までに組織を立ち上げる計画。町の地域交付金と合わせ、県による「いわて農業農村活性化推進ビジョン」(補助上限75万円、事業費の2分の1に補助)も活用し、活動に厚みを持たせることにしている。
 地域協働組織の発足や地域交付金支給に向けた動きでは、12日までに上有住地区計画推進協議会(村上薫会長)が町に対して申請を行った。同協議会ではこれまでも「八日町市日」の開催など、地域に根ざした活動を展開してきた。
 村上会長は「地区計画の中でこれまでやってきた事業に加え、みんなが楽しく参加できる取り組みや、地域の困りごと解決に生かしたい」と話す。町は今後も、各地区での意見交換会などに出向き、制度理解を図りながら有効活用を後押しすることにしている。

町が掲げる取り組みのイメージ図

町が掲げる取り組みのイメージ図