森・川・海を総合的に調査、小松正之氏が現地事務所開設/陸前高田

▲ 生態系総合研究所の小松氏(左から2人目)が、地元である陸前高田に調査拠点を開設=気仙町

 一般社団法人生態系総合研究所代表理事、東京財団上席研究員で、陸前高田市広田町出身の小松正之氏(63)がこのほど、同市気仙町の「にじのライブラリー」内に現地事務所を開設した。小松氏はおおむね月1回ペースで滞在し、五葉山・気仙川水系から広田湾にかけての総合的調査にあたる。来月には生態系総合研究所として、気仙3市町で森・川・海に関する国際シンポジウムも開催。それぞれが切り離せない関係にあることや、第一次産業の衰退とのかかわり、自然環境を生かした防災などについて考える機会を提供する。

 

来月、3市町でシンポ開催

 

 小松氏は昭和28年生まれ。東北大学卒、イェール大学経営大学院修了。農林水産省入省後、漁業交渉官や漁場資源課長、独立行政法人水産総合研究センター理事を歴任したほか、国際捕鯨委員会の日本代表代理を務めた経験があるなど、地域政策および漁場や河川に造詣が深い。
 平成27年からは日本財団の支援を受け、「気仙川・広田湾プロジェクト」として、年8回の現地調査を実施。気仙川水系(気仙川本流上流、大股川、矢作川)と広田湾の生態系、五葉山と種山ヶ原の森林地域で、近年どんな現象が起きているかといったことを総合的に調べている。
 これまでも、気仙地方における放置針葉樹の多さがもたらす問題点を指摘してきた小松氏。山の木々や農地の土壌は川と海にも影響をおよぼすとし、「漁業、農業、林業を一体的に考えるべき」と訴える。
 陸前高田での事務所開設は、継続的な調査によって基本情報を蓄積することが主な狙い。
大雨での水害発生や、流下水量の減少、漁獲量の減少などの背景に、森・川・海が深くかかわっていることを、気仙地域の人々へ伝えていきたいという。
 6月24日(土)~26日(月)には、住田町、大船渡市、陸前高田市でそれぞれ、気仙川・広田湾プロジェクトに関するイベントを開催。
 沿岸地域の生態系研究において世界最先端の研究機関である、スミソニアン環境研究所(アメリカ)のタック・ハイネス所長を招き、住田町では住民との対話集会を、両市ではそれぞれテーマが異なるシンポジウムを開く。
 小松氏は「『サケの回帰量が減っている』など、日ごろ実感していることが、調査によって理論的に裏付けられてきている。森と川と海の調査はいろんな地域で行われているが、一つの水系を丁寧に追ってまとめているのは、世界でもおそらくこのプロジェクトだけなのでは。ハイネス氏からもアドバイスをもらい、さらに調査を充実させていきたい」と意欲をみせる。
 さらに、現地事務所では地域からの〝協力者〟も募る。「『○○にシラウオがいた』とか、『川の汚れが前よりひどくなっている』など、ささいなことでもいい。山や川、海に関して気づいたこと、気になることがあれば教えてもらいたい。『昔の川はこんなふうだった』というように、写真なども提供してもらうのもありがたい」と小松氏。周囲の小さな変化から自然と人との関係を把握し、地域に役立つ知見を広げていきたいとしている。
 調査に関する情報提供や問い合わせなどは、現地事務所の榊原さん(℡55・3203、メールimaizumi-kitanojinjya@docomo.ne.jp)まで。