被災跡地に初の誘致企業、いわて銀河農園と協定/大船渡市

 末崎町でトマト生産

 

 大船渡市は19日、㈱いわて銀河農園(橋本幸之輔代表取締役社長、紫波町)と企業立地協定を締結した。同社は東日本大震災で被災した末崎町小河原地区(大田地内)の被災跡地に県内初の生産技術高度化施設を整備し、トマトの栽培と出荷を計画。防災集団移転促進事業(防集)で市が買い取った被災跡地に、市の誘致企業が立地するのは同社が初めて。市による敷地造成後、秋には施設整備に着手し、来春の操業開始を目指す。

 

生産技術高度化施設の外観イメージ(㈱いわて銀河農園提供)

生産技術高度化施設の外観イメージ(㈱いわて銀河農園提供)

 市役所で開かれた調印式には、同社から橋本社長、田中進取締役(㈱サラダボウル代表取締役)、橋本正成取締役(㈱銀河農園会長)、今泉敏朗顧問が出席。見届け役として県沿岸広域振興局の桐野敬副局長、熊谷昭浩市議会議長が同席し、市からは戸田公明市長、髙泰久副市長、佐藤高廣統括監らが臨んだ。
 橋本社長と戸田市長が協定書にサインし、固い握手を交わして調印。戸田市長は「今回の立地は、トマトの産地化による農業振興、被災跡地の利活用が本格化する事例で、民間パワーによる地域経済の振興に大きく寄与する。地域経済のけん引役として活躍するよう、行政としても支援していきたい」とあいさつした。
 橋本社長は「調印式は、スタートラインに立つ権利。来春に施設が出来上がって、そこから全員で走り続けていきたい。大船渡市に価値ある産業としての農業を生み出せるよう、努めていきたい」と意欲。祝辞では桐野副局長が被災地の農業、産業振興などに期待を込めた。
 市は津波で被災し、災害危険区域を指定した地区のうち、防集による買取地が相当規模で発生するなど、被災跡地の利用検討が必要な12地区を対象に、土地利用方針図の見直しや土地利用実現化方策の策定を進めている。
 このうち、小河原地区では市と地域が協働で検討。昨年の住民懇談会で、市が被災跡地を企業誘致に向けた産業用地として活用する方針を示し、住民側と合意していた。
 いわて銀河農園は、サラダボウル(山梨県)と銀河農園(紫波町)によって、昨年12月に設立した新会社。資本金は1000万円。
 用地(敷地面積約3万2000平方㍍)は市から借り受け、トマト栽培棟と集出荷施設棟(管理棟も含む)からなる生産技術高度化施設(施設面積約1万5000平方㍍)を建設し、トマトの生産と出荷を行う。総事業費は約6億5000万円で、国の産地パワーアップ補助金を活用する。
 県内で初整備となる生産技術高度化施設は、24時間体制で温度や湿度、日射量、二酸化炭素濃度が管理でき、植物にとって最適な栽培が可能。施設内では、うまみ成分のグルタミン酸を多く含み、真っ赤な色味が特徴の「ごちそうトマト」を年間600㌧生産し、地元を含む東北、関東のスーパーマーケットへ出荷する計画。年間約3億円の収益を目指す。
 今後は市による用地の造成などを行い、施設整備の着工は10月を予定。平成30年4月の操業開始を見込む。本社所在地は、操業開始に合わせて紫波から大船渡へ移すという。
 従業員は正社員やパートなど約30人を雇用し、最終的には50人まで拡大する計画。地元からの人材は、操業開始後に採用していきたいとしている。