「こざっぱり条例」制定へ、里山の景観保持見据え/住田

▲ 「こざっぱり条例」では、豊かな山や川に囲まれた里山景観の保全を図る=住田町

 住田町は、13日(火)開会予定の町議会6月定例会に「こざっぱり条例」制定議案を提出する。森林や農地、里山景観の保全などを目的とし、町や町民、土地所有者、事業者が一体となった推進を見据える。条例内容について、7日の環境審議会で意見交換が行われ、委員からは「賞を設けるなど普及、理解に工夫を」「町外から来る人が訪れる場所を重点的に」など、条例理念の〝見える化〟を強調する声が寄せられた。

 

6月定例議会に提出

 

 環境審議会は、環境基本条例に基づく保全などに関する基本的事項の調査や審議を担う。委員は吉田洋一氏(森の案内人代表)川村良孝氏(県大船渡保健福祉環境センター環境衛生課長)中里宣紹氏(町公衆衛生組合連合会長)佐々木康行氏(町観光協会主任)今野俊朗氏(町PTA連合会長)の5人。
 この日は4人が出席。冒頭、多田欣一町長は「『こざっぱり条例』は安らぎと快適さをもたらす住田の里山の景観を町民自らの手で守り、未来へ引き継ぐ理念を掲げ、制定するもの。町外から訪れた人々が『きれいな景観のまちだった』と思っていただけるように、取り組んでいきたい」と、理解を求めた。
 審議では、町側から条例案提出の背景などについて説明。引き続き、意見交換が行われた。
 町では、平成14年に環境基本条例を制定。豊かな自然環境を生かした安全、快適な町民生活確保に努めてきた。
 説明によると、新たな条例ではとくに、森林や農地、河川など里山景観の保全・形成を目的とする。町や町民、土地所有者、事業者が一体となった推進体制を見据える。
 「こざっぱり」とは、飾り気がなく清潔感にあふれ、見る人に安らぎや快適さをもたらす様相を描く。里山は、町民生活に身近な樹林地やその周辺の農地、草地、水辺など、古くから慣れ親しんできた地域を指す。
 基本理念の中では▽里山の自然環境や社会的状況に配慮した保全を図る▽役割分担を明確にし、それぞれの立場から積極的に里山の景観保全に向けた活動を行う▽里山の景観保全に向けた活動と理念を持続させるための人材を育成する──を掲げる。 
 直接的な町民への負担や義務を課す規定は設けない方針。自らが良好な里山の景観づくりの主体であると認識し、山林・農地所有者は日ごろから山林の除間伐や枝打ち作業、農地での雑草や樹木繁茂の防止策を講じるよう啓発を図ることにしている。
 意見交換では、条例案そのものへの異論はなかった。一方で、制定後の推進策に関しては、幅広い観点から発言が寄せられた。
 委員の一人は「賞を設けて町民の取り組みをたたえるなど、具体的な普及、啓発を」と提言。さらに「除間伐や草刈りをやろうと思っても、地域内のいろいろな行事にも顔を出さなければならず、なかなか手が回らない状況。人口減少が進む中で、行事の『こざっぱり化』も必要」と指摘した。
 別の委員も「何もかもやるのでは、ギブアップしてしまう」と同調。そのうえで、条例に基づく取り組みに関しては「バイパス沿いの目に見える部分や、観光地である種山や滝観洞を中心とし、気仙川も地域をしぼるなどメリハリある形で」と求めた。
 このほか、北限とされる竹林の保全や、子どもたちが取り組みやすい活動のあり方も話題に。住田町が推進しているニュースポーツ・クッブにちなみ「町内各地に、競技ができる芝生一面のコートを確保しては」といった意見も寄せられた。
 町議会は13日に開会。同日と14日(水)に一般質問が行われ、最終日の16日(金)に議案審議・議決を予定している。