「市民楽団」本格始動、趣味活動の〝選択肢〟提供/陸前高田市(動画、別写真あり)

▲ 初心者も団員から手ほどきを受け、さっそく楽器を演奏=高田町

 今年創設されたばかりの陸前高田市民吹奏楽団(山本健太団長、団員15人)は今月、市内で自主企画の音楽講座を始めた。9月までの前期9回と、10月からの後期に分かれて練習会を開き、「久しぶりに演奏したい」「楽器をやってみたい」という人たちの〝受け皿〟となる。吹奏楽初心者や、ハンディキャップがある人も大歓迎。合奏する楽しさを多くの人に味わってほしいとする。

 

 自主講座開き、楽器初心者も歓迎 

 

 同楽団は、陸前高田市役所に勤務する楽器経験者らを中心として発足。5月にはオープンしたばかりのアバッセたかたで、高田高校吹奏楽部との合同演奏会を開き、〝デビュー〟を果たした。メンバーは「学生時代などに楽器をやっていて、続けたいと考えている人はまだたくさんいると思う」と話し、そうした人たちをどんどん受け入れていきたいという。
 しかし、団体を「経験者だけのものにしたくない」との思いも。このため、市民自身が企画し、同市教育委員会生涯学習課が開催する「あなたのまち講座」として、吹奏楽講座を開講。受講無料で、楽器を持っていなくても参加できる。
 岩手県から市に派遣された職員で、同楽団の発起人でもある田添裕司さん(60)は、「音楽をやってみたいという方なら、どなたでも歓迎する。目が見えない方や耳が聞こえない方たちにも、合奏する楽しみを味わってもらいたい」と、気軽な受講を呼びかける。入団も強制しない。
 7日には初回の講座が開かれ、団員をはじめ10人が参加。初心者だという受講生らは、希望する楽器をおそるおそる手に取ったが、メンバーに教わりながら音を出してみたあとは、きれいに音階を吹き鳴らした。
 同じく県から派遣され、昨年度まで同市役所の財政課に勤めていた鈴木大悟さん(35)=釜石市在住=は、20年来の経験者で、団の創設に携わった1人。トランペットを担当する。「ここはスポーツが盛んだし、合唱団もあるけれど、吹奏楽団はなかった。市民にとって趣味活動の選択肢が広がるのは良いこと。震災後、外から来た人の演奏を聴く機会は増えたと思うが、地元の人自身がやってみることが大事では」と語り、受講者を歓迎する。
 以前から「サックスを吹いてみたかった」と話す水野勇太さん(32)は、団長の山本さん(32)に声をかけられての参加。この日初めて楽器に息を吹き込み、音を鳴らす面白さを味わった。「憧れていたことに、ようやく一歩踏み込めた。合奏の輪に加われるよう、これから頑張ってみようと思います」と水野さん。バンドを組んでいた経験があり、仲間と演奏する喜びがよみがえってきたという。
 講座は9月まで月2回程度、基本的には月曜日の実施。病院などで演奏を披露する予定もあり、まずは「歌謡曲4曲を合奏できるようになることが目標」と田添さんはいう。目指すは、楽団として〝独り立ち〟し「市民文化会館オープンのこけら落としで演奏すること」。夢は大きく──市民のための新しい吹奏楽団が、本格的に動き始めた。
 講座の受講を希望する人は、山本さん(℡080・2842・6270)か、田添さん(℡080・6016・7379)まで連絡を。見学のみも可。