再起胸に故郷へ〝帰還〟、居酒屋「公友館 俺っ家」きょう待望のオープン/陸前高田

▲ 「にぎわいを発信していきたい」。待望のオープンを迎え、まちの復興の力となるよう力を込める熊谷店主=高田町

 東日本大震災で陸前高田市高田町の店舗が全壊し、かさ上げされた新たな中心市街地で再建を果たした居酒屋「公友館 俺っ家」が、13日にオープンする。被災3カ月後から盛岡市で営業を続けながら、故郷での復活を目指してきた。あの日から6年3カ月。大型商業施設「アバッセたかた」がある新市街地で個人店舗としては第1号となる開業に当たり、店主の熊谷浩昭さん(57)は、老若男女が集える店となるよう再起を誓う。

盛岡から移転、新市街地の個店第1号

 

 昭和62年5月から、高田町大町で「酔い処俺っ家」を営んできた熊谷さん。地元はもちろん、熊谷さんの人柄をしたって遠方からのリピーターもある人気店だったが、震災の津波で流された。
 店を一緒に切り盛りしてきた妻・友子さん(55)ら家族は無事だったものの、多くの常連客や友人を亡くした。広田町の自宅も失い、まちは変わり果て、ただぼうぜんとした。
 「早く立ち上がらないと」。一日も早く再開したかったが、先行きは見えず、盛岡市への移住を決意。平成23年6月、盛岡市本町通に「陸前高田 俺っ家」をオープンした。
 新天地での一からの挑戦。「三陸を代表する店となろう」と、広田湾産のカキやワカメなど内陸では味わえない新鮮な魚介類を提供した。「刺身(さすみ)」「漬物(おごご)」など一部のメニューを気仙弁にした。
 内陸に避難した被災者も店に足を運ぶようになり、津波を経験した人たちの居場所となった。熊谷さんの心の中には故郷を離れることへの葛藤もあっただけに、「自分のやってきたことは間違いでなかった」とうれしさがこみ上げた。さまざまなつながりも生まれ、新たにできた仲間たちと、一昨年は盛岡市で、昨年は陸前高田市で音楽イベントも手がけた。
 アバッセたかた近くに念願の再建のめどが立ち、「陸前高田 俺っ家」は4月末にたたんだ。常連客からは惜しむ声とともにエールを受け、再起への糧とした。
 新たな店名の「公友館」は、16年まで店の近くにあった映画館「高田公友館」にちなんだ。地域で親しまれた映画館のように家族や友人、恋人など誰もが集い、喜びや感動を共有する場となってほしいという願いを込めた。
 創業30年の節目を迎えた今年、新たな一歩を踏み出した熊谷さん。「陸前高田が抱える人口減少や高齢化の問題をただ嘆いているだけでは前に進まない。市街地に出店する一人一人が人を呼び込む努力をすれば魅力的なまちは必ずできる」と力強く語り、「ここからにぎわいを発信できるような店としたい。気を引き締めて頑張る」とやる気をみなぎらせる。
 店は午後5時~同11時ごろまで営業。7月以降には昼営業も始める予定。問い合わせは同店(℡22・7705)へ。