官民挙げILC誘致促進を、大船渡市議会6月定例会一般質問初日

▲ 6月定例会一般質問が始まり、初日は5議員が当局と論戦=大船渡市議会

 大船渡市議会6月定例会は休会明けの14日、通告に基づく一般質問を行った。初日は伊藤力也、千葉盛、小松龍一、奥山行正、渕上清(いずれも光政会)の5議員が登壇し、世界最先端の素粒子研究施設・国際リニアコライダー(ILC)を北上山地へ誘致するにあたっての市の対応や港湾活用、スポーツ施設整備、介護保険事業、定住促進策などで市当局と論戦。このうち、ILC誘致に向けた今後の対応について、市は「官民挙げて誘致促進をはじめ、取り組みを一層積極的に推進していきたい」と、庁内の体制整備も進めていく考えを示した。

 

庁内の体制整備も早期に/当局が今後の対応示す

 

 この日は一般質問に先立ち、髙泰久副市長が大船渡港永浜・山口地区工業用地南側(約5・3㌶)の分譲にかかる公募を県が一時中断した件を報告。県からは12日夕方、戸田市長に対して説明があり、同日から当分の間、ILCの誘致、整備にあたって大船渡港の活用を検討するため、公募を一時中断することになったという。
 県は今後、活用方針がある程度明確になった段階で、公募の取り扱いを改めて検討する考え。副市長は「市としては、ILCにおける大船渡港の活用方法を見極めながら、用地の取得を目指す企業等の状況も引き続き注視していきたい」と述べた。
 続く一般質問では、伊藤、小松の両議員がILCの誘致や建設に伴う港湾活用のあり方を質問。トップ登壇の伊藤議員は、政府による誘致判断に対する見解や今後の対応などを尋ねた。
 市長は国や東北、県それぞれの誘致に向けた動き、国際的な情勢を踏まえ、「本年度から来年度にかけて見込まれる政府による誘致の可否判断が、現実味を帯びてきている。市としても誘致判断の正念場に向け、県や関係自治体などとの連携を強化しながら、官民挙げて誘致促進をはじめ、関連する取り組みをより一層積極的に推進していきたい」と述べた。
 再質問で佐藤高廣統括監は庁内の組織体制に関し、「早い時期に専門部署を設置するなど体制を整え、誘致や受け入れ準備、ILCを生かしたまちづくりへの取り組みを進めなければならない。通常は新年度当初からだが、状況変化に合わせて前倒しし、年度内に設置する対応も必要になる」と言及した。
 小松議員は、ILC誘致に向けた活用が検討される永浜・山口地区工業用地にバイオマス火力発電事業の進出を計画する企業があるとして、その計画への見解を求めた。
 市長は「民間事業者が木質バイオマス火力発電事業を実施すべく、県環境影響評価条例の規定に基づく手続きを進めているところ」として、事業者側が環境影響評価の本実施に先立ち、評価項目や調査手法を取りまとめた環境影響評価方法書の縦覧や説明会の開催、市民意見の聴取を今月~来月にかけ、実施すると説明。その後もさまざまな手続きが控えているとした。
 事業用地確保については「県が実施していた公募が一時中断される状況の変化も生じている。現時点においては流動的な要素が少なからず残されており、市としては本事業の実現に関心を有している立場から、環境影響評価のプロセスをはじめ、今後の情勢を注視していきたい」と述べた。
 千葉議員は市が総合公園整備計画の実現を断念した件に関し、「今後新たなスポーツ施設を整備するつもりがあるか」と尋ねた。市長は「整備するつもりである」として、本年度末までには10カ年に及ぶ公共施設の具体的な個別管理計画と総合公園断念に基づく対応策を議会に示し、施設整備を実現するための調整を図っていく意向を示した。
 同議員は、大船渡町の大船渡駅周辺地区における商店街の集客促進に向け、地区内への遊具や無料Wi?Fiの整備を要望。志田広記災害復興局長は「遊具は市民ワークショップでの意見を踏まえ、大船渡公園に検討しており、津波防災拠点施設内にも移動可能なものを設置したい。無料Wi?Fiは商業エリア街に設置されているが、津波防災拠点施設や大船渡公園にも検討したい」と答えた。
 介護保険事業について、介護従事者確保事業や施設整備の現状を取り上げたのは奥山議員。平成27年度からの第6期介護保険事業計画が最終年度を迎えたのにあたり、この評価などをただした。
 第6期計画期間においては、介護従事者の不足や建設資材の高騰などを受け、施設整備計画の変更を余儀なくされたり、既存施設の休止、縮小が相次ぐ状況となっている。
 市長は「第6期計画期間中に、介護事業が天井にぶつかってしまっている気がする。こうした難しい時代を迎え、どうしたらいいか考えると、いろいろ方策はある」として、高齢者の健康維持や外国人実習制度なども見据えた新たな人材確保などの対策例を挙げ、「さまざまな手を使いながら、市としてもベストを尽くしたい」と語った。
 渕上議員は、漁業や芸術にかかわる人々が市内に移住している現状を挙げ、地域資源を生かした定住促進策のあり方を質問した。
 農地活用に特化した対策について、木川田大典企画政策部長は、地域おこし協力隊による〝半農半IT〟のモデル化、首都圏ITエンジニアによる農業体験などの取り組み例を説明。
 移住・定住の促進には、「知ってもらうことを皮切りに、大船渡のありのままを体感し、暮らしを実践して、数年後には移住してもらうといった段階を踏まえた取り組みを提示することと、それをサポートする仕組みや体制づくりが不可欠。地域で移住者を受け入れる機運の醸成も肝要と認識している」と述べた。