〝北限〟の味が復活、「けせん茶」販売再開へ/大船渡市農協 (動画、別写真あり)

▲ 震災から6年余りを経て販売再開される「けせん茶」

 大船渡市農業協同組合(新沼湧一組合長)は、震災後中止していた「けせん茶」の販売を、本年度中に再開する。東電福島第1原発事故による放射能汚染、生産者の高齢化・減少を受け、茶葉の生産量は激減したが、本年度は農協職員が摘み取りに出向くなどして原料を確保。販売数量は約18㌔と少ないが、震災から6年余りを経て復活にこぎ着け、今後、販売時期などを決める。来年度は生産量拡大を目指し、産地の北限とされる自慢の茶を積極的にPRしていく。

 

 職員が収穫し原料確保

 

本年度は農協職員による摘み取りが行われ、原料を確保した=陸前高田市

 300年以上前から茶畑があったとされる気仙。独特の風味とうま味が人気で、明治・大正時代には、大船渡、陸前高田両市で製茶や出荷が盛んに行われていたという。
 市農協は平成5年、米崎町に加工施設を整備。大半の茶葉は生産者の自家消費用として委託加工し、一部は農協が原料を買い取って「けせん茶」として販売してきた。
 震災で断水被害にあい、23年度は工場の稼働を断念。福島原発による放射能汚染対策として、各地にある成木はすべて一度枝を切るよう生産者に呼びかけ、再び自生したもののみを取り扱うこととした。
 25年度から加工を再開したが、枝を伐採したため摘み取り可能な生産者が限られ、収穫量は減少。25年度は茶葉300㌔(持ち込み者延べ31人)と、震災前の4分の1以下に落ち込んだが、数量は徐々に回復し、昨年度は552㌔(同45人)となった。
 本年度は、前年度比31㌔増の583㌔(同49人)が工場に持ち込まれた。このうち、生産者の自家消費用の約490㌔は5月下旬~6月上旬まで加工作業が行われた。
 一方、市農協は、気仙両市の生産者3軒で販売用の茶葉を収穫。生産者持ち込み分を合わせて約90㌔を買い取り、商品用に加工した。
 摘み取りを受け入れた陸前高田市気仙町丑沢の遠野ヨシ子さん(73)は「近くの住民の力も借りて収穫してきたが、昨年度から摘み取りはしていない。味は近所でも評判で、やはり気仙茶はおいしい。ただ、高齢者には管理が大変。代わりに摘み取ってもらえるのはありがたい」と喜んだ。
 販売時期や方法は、現在検討中。商品は100㌘、50㌘入りの2種類を予定している。
 長年、加工作業を担う市農協営農経済部営農振興課世田米ふれあいセンターの森下克之センター長は「ようやく販売に至ったが、生産者の高齢化が深刻で課題は多い。『けせん茶』を、地元をはじめ多くの人に味わってもらえるよう生産量を増やし、何とか震災前の規模に戻していきたい」と力を込める。