遊休農地の現実見つめて、地域おこし協力隊員が行動/住田町

▲ 遊休農地を借りて農作業に励む平林さん。新たな活用策の掘り起こしや交流人口拡大も見据える=上有住

 農業の担い手不足や少子高齢化などに伴い、拡大傾向にある遊休農地。住田町内では、各地区公民館などに配置されている地域おこし協力隊員が、新たな視点での課題把握や活性化に向けた取り組みをスタートさせた。実際に遊休農地を借りての耕作が始まったほか、9月には3泊4日の日程で大学生らを対象としたフィールドワーク型の活動も企画。地域に根ざした課題解決や交流人口拡大などにつながるか、取り組みの成果が注目される。

 

 実際に耕作、大学生との交流企画も──

 

 本年度協力隊員となった平林慧遠さん(31)=東京都出身=は着任後すぐに、上有住・両向自治公民館そばの遊休農地約20㌃を借りた。下有住地区公民館を拠点とし、地域活性化に取り組む傍らで、町の基幹産業である農業、林業振興への貢献も見据える。
 平林さんは岩手大学農学部卒業後、岩手県職員となり、平成21~23年度は県大船渡農林振興センターで勤務。林業分野が長く、農業経験はほとんどない。
 「自分でもやってみないと、現状を把握することができないと感じていた」と、着任当時を振り返る。自ら中古の耕うん機を購入。時には地域住民が立ち寄り、アドバイスを送る。
 この農地は、かつてはタバコ畑として活用されていたが、近年は耕作されていなかった。ただ、定期的な草刈りや土おこし作業は行われていたといい、「ここは、恵まれていると思う」と語る。
 そのうえで「遊休農地の中でも、単なる放棄ではなく維持管理作業が行われている場所もある。維持管理もされていなければ、すぐに新規で始めることは難しい。残すべきところは残すなど、現状を把握し、課題を整理しながら進めることが大切では」とも話す。
 現在は、トウモロコシやトマトといった一般的な野菜に加え、生薬のカンゾウ(甘草)も育てる。漢方などで広く需要があるが、日本ではほとんどが中国からの輸入に頼る。新たな作物振興の掘り起こしにも視点を向け、実証を重ねる。
 町の地域おこし協力隊員は世田米、大股、上有住、下有住、五葉の各地区に配置された。さらに食いく、木いくの各プロジェクトでも採用し、現在は7人体制。平林さんを含めた協力隊有志が主催し、9月4日(月)から3泊4日の日程で、遊休農地再生に向けたフィールドワーク「100年先の農を考える!! in住田」を開催する。
 農業や地域課題解決に興味がある大学生らが対象で、町内各地を回りながら現状把握や課題整理、活性化に向けた立案などを行う。環境整備や収穫作業、地元生産者らとの意見交換を計画しているほか、宿泊では公民館施設や民泊を活用する。
 この企画では、20~30代の若手が多い協力隊員のマンパワーや、既存施設を生かした交流人口拡大を見据える。平林さんは「まずは遊休農地の現実を学び取り、現状としてどのような農業基盤があるのかにも理解を深めてもらないがら、一緒に知恵を出し合うことができれば」と語る。
 フィールドワークへの参加は、7月31日(月)まで受け付ける。申し込みや運営に関する問い合わせは、事務局役を務める大股地区地域おこし隊の近藤さん(℡47・2403)へ。