9月から内容確認調査へ、栗木鉄山跡国指定見据え/ 住田町

▲ 本年度初開催となった指導委員会議=住田町

 住田町教委による栗木鉄山跡調査指導委員会議は20日、町役場で開かれた。栗木鉄山跡は、明治から大正にかけての製鉄遺跡として平成11年に県指定史跡となっているが、さらなる価値の明確化を図ろうと、33年度までの国指定文化財申請を目指す。本年度から、第一高炉や本社事務所跡、鋳物工場跡を調べ、歴史的意義の明確化などにつなげる方針。委員間の協議では、第一高炉の炉底部分の調査や、広く住民らに公開していく重要性も話題に上った。

 

第一高炉、事務所跡など

 

これまで保存状態の良好さなどが高い評価を得てきた栗木鉄山跡

これまで保存状態の良好さなどが高い評価を得てきた栗木鉄山跡

 栗木鉄山跡は主に世田米の国道397号栗木トンネルの種山側に位置し、付近には大股川が流れる。明治から大正にかけての製鉄所で、一時は国内4位(民間3位)の銑鉄生産量を誇った。石垣や水路、高炉の位置などを示す遺跡が見られる。
 江戸時代から蓄積されてきた製鉄技術や、立地環境を生かして操業。第一高炉については、製鉄史の中で大島高任式高炉の最終期を飾るとの位置づけもなされている。職員住宅なども整備され、当時は「鉄の村」が形成されていた。
 指導委員会議は昨年度設置され、本年度の開催は初めて。委員は熊谷常正氏(盛岡大学文学部社会文化学科、委員長)、小野寺英輝氏(岩手大学工学部機械システム工学科)小向裕明氏(大槌町教委生涯学習課)佐々木清文氏(前・埋蔵文化財セ)の4人で構成している。
 この日は委員に加え、県教委生涯学習文化課担当職員や町教委職員を加えた10人余りが出席。協議では、これまでに開催した会議での議論内容や、国庫補助対象事業費・予算額を確認した。
 引き続き、本年度から町教委が行う内容確認調査箇所や地形測量調査委託仕様書について意見交換。内容確認調査は9月から実施予定で、史跡範囲や各施設所在地の選定などを目的に測量・図面化を行う。
 本年度は主に▽第一高炉を支える柱跡を出し、高炉の規模を確認する▽本社事務所の範囲を確認する▽鋳物工場の建物規模を確認する──を計画。第一高炉については、炉底部を確認することで高炉全体の機能や設備状況を明らかにしていく方向性が話題に上った。
 同町ではこれまでも、小学生が環境学習で栗木鉄山跡を訪れているほか、一般向けの見学会も開かれている。議論では、今後も積極的に公開する方針を確認。随時視察を受け入れ、内容確認調査の成果などを発信しながら、地元内外での関心喚起につなげる。
 熊谷委員長は「国の史跡にするためには、歴史的な意義を明らかにしなければならない。今後は製鉄の技術史上の位置づけと、そこに集落があったという位置づけを確認していく調査となる。江戸時代からの伝統に新しい技術が生かされ、近代製鉄への橋渡しをしていった流れがより明らかになっていけば」と話す。
 内容確認調査は、31年度までの計画。町教委は33年度までに、国に文化財指定申請を行う考えを示す。
 町教委では、貴重な遺跡の保全を進めるとともに、住民をはじめ多くの人々に学びの場を提供できる環境整備推進も見据える。種山に構える各観光施設に近く、幹線道路沿いにあるため、今後は利活用への関心の高まりも期待される。