新しい憩いの場に、大船渡町の平山さんが「ふれあい地蔵様」安置(別写真あり)
平成29年6月23日付 7面

大船渡市大船渡町の災害公営住宅・川原アパートに住む平山睦子さん(61)はこのほど、市の土地区画整理事業によりかさ上げされた同町野々田の所有地に、大阪の支援者から震災後にもらい受けた石像「ふれあい地蔵様」を安置した。ともに仮設で暮らした仲間たちも立ち会い、「新しいみんなの憩いの場」となることを願った。
所有するかさ上げ地に
平山さんは、東日本大震災津波で同町にあった自宅を流失。平成23年5月から、大船渡中学校校庭に整備された永沢応急仮設住宅での生活が始まり、被災住民と支援者の橋渡しを行ってきた。
地蔵様は、同じ年の秋ごろ、震災直後から気仙各地で支援を行っている一般社団法人・元気人間製造研究所(大阪府堺市)からもらい受けた。同研究所所属の石彫家・中西保裕さんが複数体彫ったうちの1体で、平山さんは支援者らの温かな思いに感動し、「いつか、自分の土地に安置させてもらう」と約束を交わしたという。
その後、仮設の集会所に置かれた地蔵様は「ふれあい地蔵様」と呼ばれ、住民に親しまれるように。震災で痛めた被災者らの心を癒やす存在ともなり、多くの縁を結んだ。
川原アパートの入居が27年8月から始まり、地蔵様は平山さんが引っ越し先で一時保管。仮換地先の盛り土整備が終わり、各種手続き後、ようやく〝安住の地〟に地蔵様を置くことがかなった。
地蔵様安置の知らせを受け、永沢仮設と交流のあった東京都の光照院(吉水裕光住職)は、高さ90㌢ほどのみ堂を寄贈。また、国内で希少といわれる富山県産の大理石を加工した花立ても贈った。
平山さんや永沢仮設の元住民らは、今月9日に設置されたみ堂に集まり、地蔵様を納めて合掌。設置場所は、災害公営住宅・野々田アパートの近くで、付近を通りかかった平山さんの友人たちも一緒に手を合わせた。
川原、野々田両アパートを含む市内各災害公営住宅には、住民同士のコミュニティーをつなぐ集会室が設けられたが、異なる住宅の住民が自由に出入りすることはできない。地蔵様を置いた場所を「散り散りになった仲間が気軽に集まれる場に」という思いもある。
安置から2週間がたった現在、み堂の周りには、色とりどりの花々を咲かせたプランターなどが置かれ、来訪者を歓迎。平山さんは今後、ベンチの設置など多くの人が訪れてもいいよう準備を進めていくという。
平山さんは「時間がかかったが、地蔵様を安置するという約束をやっと果たすことができた。地蔵様には、大船渡の人たちがこれからもたくさんの縁をつなげられるよう見守ってほしい」とほほ笑んでいた。