仮設入居女性らの踊り収録、陸前高田の〝元気の象徴〟/動画サイトで世界発信(動画、別写真あり)

▲ はつらつと踊り、笑顔をはじけさせた女性たち=気仙大工左官伝承館

 女優の大場久美子さんが作詞した楽曲『~世界中の誰かのために~』に合わせ、陸前高田市の高田一中仮設の入居女性たちを中心とした「一中仮設BAPPA(バッパ)ダンサーズ」が25日、小友町の気仙大工左官伝承館で踊りを披露した。震災の風化防止や被災地からの元気発信を目的とした企画で、この日撮影された踊りは、編集ののち動画サイト・ユーチューブで公開予定。世界へ向け、〝たがだのばっぱ〟たちの生き生きした笑顔が配信される。

 

女優・大場久美子さんがプロデュース 


 東日本大震災発生後、何度もボランティアで同市を訪問している大場さん。高田一中仮設の住民とも交流する中で、高齢女性らがはつらつと『長生きサンバ』を踊る姿、ほかの人のために動くことを苦にしない様子などに深く感銘を受け、今回の動画撮影を提案したという。
 「すでに頑張り過ぎるぐらい頑張っている皆さんが、ほっとできるような内容に」と考えながら大場さんが詞を書き下ろし、折笠雅美さんが作曲。血行促進や脳の活性化、リラクゼーション効果も意識しながら大場さん自身が振りつけも考え、先月と今月の2回、ダンスの直接指導も行った。
 「BAPPAダンサーズ」と名付けられた60~80代の女性たちは、大場さんの厚意を受けて発奮。仮設住宅で毎朝行っている「ラジオ体操」の時間を利用し、1カ月間、自主練習に励んできたという。
 撮影場所に選ばれたのは、気仙地方の伝統的な母屋がある気仙大工左官伝承館。おそろいの〝コスチューム〟である白いかっぽう着に身を包んだダンサーたちは、胸に市花・ツバキのブローチを飾り、晴れ晴れとした顔で収録に臨んだ。撮影の際は、大場さんに代わり、ゆるキャラ「クーミンばあちゃん」も加わった。
 「世界中の誰かのために笑顔を『届けよう!』」「あなたもひとりじゃない みんなが微笑んでいる」「ありがとうと素直な気持ちになれたらいいね」──前向きな歌詞に合わせてチャーミングなポーズを決め、輝く笑顔を振りまく女性たちは、見学者たちをたちまち〝とりこ〟に。スタッフ側も感激のあまり涙を流し、踊り終えた出演者と抱き合って達成感を分かち合った。
 クーミンばあちゃんは、「バッパダンサーズの踊りと、心からあふれてくる笑顔が素晴らしかった!震災というとてつもない悲しい出来事はあったが、陸前高田のみなさまのパワーは、世界中を元気にしてくれるはず」と、大場さんの思いを代弁。一人一人バラをプレゼントされた女性たちは、少女のようにほほを上気させ、充実した表情を見せた。
 メンバーの一人で、ダンサーズ19人分のブローチを作った菅原眞佐子さん(74)は、「白いエプロンが衣装と聞いたので、ちょっとは〝色気〟もつけたいと思って編んでみました」と照れ笑い。「仮設を出た人にも声をかけて参加した。みんな仲が良く、団結力があるからできたこと」と、震災後にはぐくまれた絆が、一つの形として残されることを喜んだ。
 「私たちのために曲や踊りを作ってもらい、名前までもらった。仮設からバラバラになってしまっても、また集まるきっかけができた」と、同グループのリーダー・菅野英子さん(80)。「私たちの生活はこれからが本番。この踊りが、元気で長生きするための〝生きがい〟にもなると思う」と、大場さんに感謝していた。