広田湾産の味 全国へ、イシカゲ貝出荷始まる/陸前高田

▲ 出荷が始まった「広田湾産イシカゲ貝」。浜では貝の選別作業などが行われている=気仙町

 陸前高田市の広田湾漁協が「広田湾産イシカゲ貝」としてブランド化を目指す特産「エゾイシカゲガイ」の出荷が、25日に始まった。東日本大震災で被災した漁業者を支援する国の補助事業が昨年度末で終わり、正念場を迎える本年度は過去最高の70㌧出荷を計画。全国で唯一、産業レベルでイシカゲ貝の養殖を手がけており、徐々に知名度を上げてきた。出荷作業は10月中旬まで行われ、東京・築地市場を中心に全国に送り出す。

 

知名度徐々に

過去最高の70㌧を計画


 市内では、出荷に向けた作業が24日から行われ、漁業者らが2年半育てた貝を水揚げしている。
 初日の浜の作業場では、早朝から貝の砂を洗い流したり、出荷サイズの5・5㌢以上の大きさを選別するなど慌ただしい光景が広がり、ゴロゴロとした貝は次々とカゴに分け入れられた。
 25日は気仙支所から975㌔、米崎・小友支所から565㌔の合わせて1・54㌧を出荷。約1㌧は築地市場に、残りは関西や全国の地方市場に運ばれた。
 クリーム色のプリプリとした身は濃厚で甘く、関東圏のすし店などからの需要が高いエゾイシカゲガイ。市内の生産者13人でつくる広田湾産イシカゲ貝生産組合(熊谷信弘組合長)は将来的には、100㌧生産を目指す。同漁協や市は「広田湾産イシカゲ貝」の名称で地域団体商標の取得に取り組んでおり、ブランド化を進めている。
 震災で養殖施設が壊滅したが、平成26年に出荷を再開。本年度は貝の成育もおおむね順調だったため、出荷量は過去最多を記録した昨年度の59㌧をさらに上回る70㌧を見込む。
 漁業者の経営再建を後押しする国の「がんばる養殖復興支援事業」が終わり、本年度からは生産量が漁業者の収入に直結する。「オンリーワンの食材」として認知度の広がりとともに、出荷先は徐々に増えており、築地における単価は1㌔当たり2500円と震災前より数百円上がった。
 課題は生産の安定化。稚貝は天然採苗に頼るため、生産量はその年ごとにばらつく。市は本年度、生産規模の拡大などにつなげるため、養殖施設の設備購入費などを補助する事業を手がけている。
 イシカゲ貝養殖に先駆けとなって取り組んだ小泉豊太郎さん(69)=気仙町=は「順調に水揚げできるよう願う。地元ではまだあまり知られていないので、市内でも知名度が上がってほしい」と期待する。
 生産組合の熊谷組合長(61)=同=は「国からの支援も終わり、これからが勝負。生産の安定性がないなど課題もあるが、100㌧生産を目指して頑張っていく」と力を込める。