住民から反対相次ぐ、永浜・山口地区でのバイオマス発電/事業者が赤崎町で説明会

▲ 地元住民から反対意見が相次いだバイオマス火力発電事業の環境影響評価方法書に関する説明会=赤崎地区公民館

 大船渡市赤崎町の大船渡港永浜・山口地区工業用地でバイオマス火力発電事業を検討する前田建設工業㈱(東京都)は27、28の両日、市内2カ所で同事業の環境影響評価方法書にかかる説明会を開催した。このうち、赤崎地区公民館では地元住民から事業への反対が相次ぎ、詳しい事業説明には至らなかった。同社は後日改めて説明会を開くとともに、県が同工業用地の公募を取りやめる場合には、「事業を中止せざるを得ない」との考えを示した。

 

住民から反対相次ぐ

用地公募中止の場合は断念へ


 同社はバイオマス燃料によるクリーンエネルギーの供給を目指し、バイオマス火力発電の事業化を検討している。
 当初はバイオマス混焼の石炭火力発電所として計画し、平成28年4月、県条例に基づく環境影響評価の第2種事業(火力発電所は出力3万㌔㍗以上11・25万㌔㍗未満)判定の手続きを実施。同年6月、県知事から▽水環境への影響▽防災集団移転促進事業による住宅団地等への影響(景観、騒音および振動)──が著しいものとなるおそれがあると指摘され、「環境影響評価その他の手続きが行われる必要がある」と判定された。
 これを受け、同社は県環境影響評価条例に基づく手続きに着手。木質バイオマスを主燃料とし、現時点で発電効率が最高の最新発電技術によって冷却水の必要量、大気へ排出するガス量などを大幅に削減することを可能とした環境配慮型に見直した。
 発電所の出力は最大11万2000㌔㍗。計画地の周辺には、永浜や中赤崎地区の防災集団移転団地、災害公営住宅、小中学校などが位置している。
 なお、事業を計画する同工業用地の南側区画(約5・3㌶)は県が分譲を公募していたが、今月12日に一時中断を決定。国際リニアコライダー(ILC)にかかる大船渡港の活用検討のためとしている。
 環境影響評価の実施に向け、同社では評価の項目や調査、評価の方法などを取りまとめた環境影響評価方法書を作成。7月14日(金)まで、市役所と大船渡地区合同庁舎、同社ホームページでの縦覧を行っている。
 説明会はこの縦覧に併せ、条例に基づく手続きの一環として開催。この日は地域住民ら約50人が参加し、同社からは事業戦略本部副理事の片山広志プロジェクトマネージャーら11人が出席した。
 会社側は、環境影響評価について説明。また、参加者側から提示された質問書にも回答した。
 住民側との質疑では、第2種事業判定時に県から指摘を受けた景観問題が話題に。第2種事業では施設の稼働に伴う騒音対策として、プラントの周囲に高さ20㍍の防音壁を設置すると提案したが、県の指摘を受けて見直しをかけることとしている。
 参加者の一人は「第2種事業の資料作成時に、市や地元漁協から意見を求めたのか」と質問。同社は「(資料は)基本的には第2種判定の手続きで相談することはあっても、業者でまとめる。環境影響評価の中で作った書類については、地元の皆さまや市、最終的には知事からも意見を受けて、修正すべきところは修正しようと考えている」と答えた。
 別の参加者は「家が目の前にあり、(壁ができれば)何も見えなくなる。子どももいる。津波が来て、もとあった家から違うところに移され、これまで死にそうな思いでやってきた。事業としては成り立つかもしれないが、ここではだめ」と強く反対の姿勢を示した。
 また、バイオマス火力発電事業の実現性などを問う質問書への回答で同社は、FIT(再生エネルギー固定価格買い取り制度)を利用し、発電開始を33年の中ごろに予定しているなどと説明。
 県による同工業用地の公募一時中断については、「(ILC活用と)共存できればそれに越したことはない。県から公募しないといわれれば、事業を中止せざるを得ない」との考えを示した。
 住民側からは反対する立場からの質問、意見が相次ぎ、終盤には「ぜひ中止にするよう切に願う」と話す人も。この日は詳しい事業説明までには至らず、参加者からはより詳しい資料の配布なども求められ、後日改めて説明会を開催することとなった。
 終了後、片山マネージャーは「粘り強く、互いに意志の疎通をもち、同じ方向を向いて事業を進めるようにしていきたい」と話していた。