経営改善進むも赤字に、三木・ランバーの決算 新トップは紺野氏/ 住田町

▲ 木工加工団地内に構える三木の事務所=世田米

 住田町世田米の木工加工団地内に構える三陸木材高次加工協同組合(三木)と、協同組合さんりくランバー(ランバー)は30日までに通常総会を開き、平成28年度決算を承認した。町に対する計画通りの融資償還が急がれ、一昨年秋から経営改善を進めるが、三木は1805万円、ランバーは3058万円の純損失を計上。両事業体の代表理事だった中川信夫氏が今年2月に死去し、6月からけせんプレカット協同組合理事の紺野健吉氏が新たなトップに就任した。町政課題でもあり、残り任期1カ月となった多田欣一町長が「再建の道筋をつけたい」と語る中、当面はその行方が焦点となる。

 

多田町政の「道筋」焦点

 

 三木は主に、防腐加工などを施した構造用集成材を製造している。総会には、組合員18人のうち、委任状を含めて14人が出席。28年度の事業報告、本年度の事業計画と収支予算など6議案を原案通り承認、決定した。
 売上高は13億4151万円、純損失は1805万円を計上。次期繰越損失金は8億719万円に増えた。
 28年度は、県経営支援アドバイザーによる経営分析や歩留まりの改善、アメーバ経営導入などを進めながら、生産性の向上に注力。一方で、昨夏の台風10号被害がラミナ仕入れに影響したほか、昨年11月以降は経営改善前の平成27年度に工面した借入金返済で資金繰りが悪化する「特別要因」もあったという。
 また、ランバーは、丸太を集成材用ひき板(ラミナ)に製材、乾燥加工している。総会には、組合員8人中7人が出席。売上高は2億6381万円、純損失は3058万円を計上し、次期繰越損失金は4億4532万円となった。
 木材産業は、価格低迷や林業労働力の減少・高齢化などの課題を抱え、厳しい経営状況が続く。こうした中で▽4㍍材中心の仕入れに変更▽歩留まり向上・生産性増加を目的に、直径20㌢以下の丸太を排除し、良質材丸太を確保──といった取り組みを進めた。
 両事業体の損失金計上は3年連続。27年度は三木が6229万円、ランバーは4047万円に上ったが、28年度は縮小した。一昨年10月からけせんプレカットの泉田十太郎専務を支配人に招き、経営改革として品質向上やコスト削減を進めている。
 本年度の売上計画は三木が14億5200万円で、ランバーは3億2480万円。利益は三木が1200万円、ランバーは1103万円を見込む。
 三木の計画によると、一昨年10月以降の経営体制を定着させ、収益性を意識した経営を展開する方針。競争が厳しい状況下にあるため増収は難しく、製造コスト低減を図る。
 毎月の売上高目標は1億2000万円前後に設定し、黒字決算を目指す。昨年11月に開催された住民説明会で示した経営再建方針の中では、月平均の売上高は1億3000万円としていた。
 両組合は、19年に経営危機が判明。町から約7億9000万円の公金融資を受けて再建を進め、26年度から年度当たり約3100万円を町へ償還する計画だった。しかし、27年度内の償還は222万円。28年度は450万円にとどまっている。
 これまで両事業体の代表理事だった中川氏は、今年2月2日に死去。以降、長らくトップ不在の状態が続いた。それぞれ6月に開かれた理事会で、出資団体であるけせんプレカットで理事を務める紺野氏の就任が決まった。
 経営改善の兆しは出ているが、町に対する当初計画通りの融資償還は見通せない状況が続く。
 こうした中、今期限りで勇退する多田町長は、町議会6月定例会で「任期中には、ある程度の道筋をつけたい」と発言。任期を終える8月4日まで約1カ月と迫る中、今後の対応に注目が集まる。
 経営状況に関し、多田町長は「計画通りに償還できる数字ではなく、残念に思っている。一時的な損失が響いたが、通常の生産体制の中ではプラスにできると認識している」と語る。
 そのうえで「まだ具体的に話せる内容はないが、昨年の住民説明会では、再建すべきという声が圧倒的に多かった。それをふまえ、どうしていくかの道筋を7月中に示したい」としている。