全面改修前に感謝、山小屋・石楠花荘で「つどい」/五葉山(別写真あり)

▲ 日ごろから五葉山を愛する人々が集まった「つどい」=石楠花荘前

思い寄せ合い 心一つに

 

 大船渡、住田、釜石の3市町にまたがる本県沿岸南部の最高峰、五葉山(1351㍍)の山頂部近くに位置する山小屋・石楠花(しゃくなげ)荘で2日、「感謝のつどい」が開かれた。老朽化の進行を受け、昨年度から関係団体・個人がスクラムを組んで地道な活動を続けた中、全面改修が決定。この日は五葉山を愛する人々が県内外からつどい、さまざまな思い出を巡らせながら、今後も知恵を出し合って美しい自然風景を受け継ぐことを誓った。

 住田町の五葉山自然倶楽部、釜石市の釜石山岳協会、釜石勤労者山岳会の3団体が昨年4月に設立した、五葉山石楠花荘改修促進協議会(市川滋会長、改修促進協)が主催。約80人が集い、陸前高田市、気仙沼市、埼玉県大宮市などからの参加もあった。
 大船渡、釜石市境の赤坂峠から登山を開始。道端にはヤマツツジやレンゲツツジが咲き残り、8合目を越えると開花時期に入ったシャクナゲが歓迎した。
 山小屋前では、市川会長がこれまでに寄せられた署名、寄付への感謝を込めながらあいさつ。「きょうのつどいを、参加者一人一人の力で盛り上げていこう」と呼びかけた。
 引き続き、釜石市を中心とした登山愛好者によるグループ・シャモニー同人クラブの松田智子さんが、山小屋内に備え付けられている落書き帳に寄せられた「思い」を紹介した。
 「久しぶりに登ってきて、小屋がきれいなのにびっくりした。皆さんの心くばりに感謝、感謝」(平成15年)、「震災のせいで何もかも自粛していても始まらない。意地でも普通の日常を少しずつ取り戻そうかなと。午前4時30分。三陸の日の出を拝んでまたがんばる」(同23年)などの言葉に、参加者はうなずきながら耳を傾けた。
 五葉山に対する畏敬を込め、市川会長は「五葉賛歌」を、管理人を務める鈴木一敏さん(大船渡)は「日頃市村建設歌 心は一つ」をそれぞれ独唱。このあと、住田町上有住天嶽地区に伝わる応援歌「五葉山の彼方より」を登山者全員で歌い、心を通わせた。
 登山中、多くの参加者が感心したのは、刈り払いなど手入れが施された登山道。歩きやすい環境を維持している管理人の鈴木さん、伊藤直人さん(釜石)、松田陽一さん(同)の紹介も行われた。
 石楠花荘は昭和63年に整備。基礎のコンクリートブロックはそのまま使用しても問題がない半面、土台と外周の柱材は中が空洞状態になっているとされ、地震や強風時の影響が懸念されていた。
 改修促進協は昨年度から、署名、募金活動を展開。署名数は3800筆超、募金額は300万円に達した。
 建物を管理する五葉山自然保護協議会(会長・野田武則釜石市長)は先月27日、現建物の基礎を生かして新しい小屋を整備する方針を決定。10月から設計に入り、来年10月の供用開始を目指す。
 改修促進協では今後も募金活動を続ける。署名も継続し「これからも五葉山を愛するとともに、山小屋を大切にし、丁寧に利用する」といった意志を発信することにしている。