貸付金など計10億円超、三木・ランバーと連帯保証人に支払い求め調停申し立て/住田町

▲ 調停申し立てに関する議案を賛成8、反対2で可決=住田町議会

 住田町議会臨時会は11日に開かれ、三陸木材高次加工協同組合(三木)と協同組合さんりくランバー(ランバー)への貸付金残金など計10億円超の支払いを求める調停を申し立てる議案を可決した。申し立ての相手は両事業体と連帯保証人の25個人・団体。両事業体は赤字経営が続き、計画通りの返済ができていない。町側は事業運営からの回収は厳しいと判断。調停により債務整理を図ることで、同じく木工団地を構成するけせんプレカット協同組合との経営一体化への道筋をつくる狙いだ。町は24日(月)以降、住民向けの説明会を行う。

 両事業体は、平成19年に経営危機が判明。町から約7億9000万円の公金融資を受けて再建を進め、26年度から年度当たり約3100万円を町へ償還する計画だった。しかし、支払期日を迎えても、定められた額の償還ができない状況が続いた。27年度内の償還は222万円。28年度は450万円にとどまっている。
 支払い申し立ての内容は、農林業振興基金貸付金債務は三木が3億9377万円で、ランバーが3億8950万円。集成材加工施設の貸付料は三木が6829万円、町有立木の未払代金はランバーが2億2584万円。総額は10億7741万円に上る。
 12日までに大船渡簡易裁判所に申し立てる。代理人弁護士により調停を遂行することにしている。
 多田欣一町長による説明後、質疑では町議の一人が「これは本来、和解を求めるもので、借りている側が貸している側に棒引きを申し込むのが一般的。なぜ、貸し手が申し込まなければならないのか」と指摘し、説明を求めた。
 これに対して多田町長は「本来はそうあるべきと思うが、両事業体は(2月に前理事長が死去したあと)ようやく先月新たな理事長が決まるような状況で、結果的には自分たちからそういった申し込みはしないことになった。それでは、このままズルズルといってしまう。解決へ進まないと判断した」と答弁。
 さらに「両事業体を倒産させてはならないという意見を議会や町民からいただいており、わたしもそういう判断をしている。最終的に三木、ランバーが継続して事業をできる方策を狙った」と語った。
 町は両事業体の経営再建方針について、昨年11月に説明会を開催。この中では、平成31年度以降は当初予定通りの償還ができるとの見通しも示されていた。今回の調停は過去の未払い金にとどまらず、今後計画的に返済する予定だった貸付金も一括して支払いを求める内容となっている。議員からは「これまでの説明会とは全く異なる対応で、町の債権放棄につながるもの」との追及もあった。
 多田町長は「昨秋の説明会で示した内容は、両事業体から出た数字をもとに示したが、現実にはうまく回らずに来た。大きな債務を抱えていては再建のめどが立たない中、再度検討した結果、今回の調停申し立てに至った」と語った。
 また、自らの責任については「政策的に誤った判断をしたとは思っていない。ただし、町民感情からいけば、町長としての責任を問う声はその通りだと思う。今後考えたい」と述べた。
 質疑後、村上薫議員が「これまでの説明と整合性がとれない」と反対討論を展開。一方、賛成討論には瀧本正德、佐々木春一両議員が立ち、それぞれ「(プレカット、三木、ランバーの)三位一体の事業運営を強く望む」「両組合の継続、経営健全化に向かう第一歩。課題の先送りをすべきではない」と発言。採決では村上、林﨑幸正両議員を除く8議員が起立し、賛成多数で可決された。
 臨時会終了後、多田町長は「満額回収できる見通しがあるならば、最初から調停はしない」と、額面通りの回収は難しい見通しを示した。
 そのうえで「事業体がなくなれば、信頼性なども含めて大きな影響が出てくる。債務を整理することで、(黒字経営が続く)プレカットとの経営一本化の道筋が生まれる」と語った。
 多田町長は11日、町職員にも調停に至った経緯を説明した。町長選投開票後の24日(月)以降、住民向け懇談会を開くことにしている。