住民側の反対根強く、永浜・山口でのバイオマス発電/赤崎町
平成29年7月20日付 2面

事業者が再説明会
大船渡市赤崎町の大船渡港永浜・山口地区工業用地でバイオマス火力発電事業を検討する前田建設工業㈱(東京都)は18日夜、赤崎地区公民館で同事業の環境影響評価方法書にかかる再説明会を開いた。住民側からは景観や騒音、排ガス、温排水などによる周辺地域、漁業への影響を不安視する質問、意見が上がり、多くが計画への反対を主張した。
同社はバイオマス火力発電の事業化に向け、バイオマス混焼の石炭火力発電所を計画。昨年4月、県条例に基づく環境影響評価の第2種事業判定の手続きを行い、同年6月には県知事から環境影響評価などの手続きが必要との判定を受けた。
そこで、県環境影響評価条例に基づく作業に着手。環境影響評価の項目や調査、評価の方法などを取りまとめた環境影響評価方法書を作成し、先月27、28の両日に市内2カ所で説明会を開いた。しかし、初日の赤崎会場では詳しい事業説明には至らず、今回再度開催した。
この日は、地域住民ら32人が参加。同社からは、事業戦略本部副理事の片山広志プロジェクトマネージャーら8人が出席し、環境影響評価方法書の概要を説明した。
それによると、計画地は同工業用地の南側区画(約5・3㌶)。主燃料を木質バイオマスに見直し、環境配慮型の発電所(最大出力11万2000㌔㍗)とした。
ボイラで木質ペレットを焼却して蒸気をつくり、タービンを稼働して発電。焼却に伴う排気ガスは集じん装置などで処理後、煙突から大気中へ放出する。
プラント用水は、盛川周辺に水源となる井戸を3カ所程度分散配置し、管路で計画地まで送水。排水は計画地内の排水施設で処理後、下水道に放流する。燃料のバイオマスは、海上輸入により調達する計画。
工事期間は、平成30~33年度の約34カ月を予定。試運転は33年度に約6カ月を見込む。
環境影響評価方法書では、工事の実施と施設の存在・供用の面から、▽大気質▽騒音▽振動▽地下水位等▽動物▽生態系▽景観▽人と自然との触れ合いの活動の場▽廃棄物等▽温室効果ガス──の10項目を選定。特に、大気質、騒音、振動、地下水位等はさらなる調査、予測、評価を実施するとしている。
なお、県は計画地の分譲公募に関し、国際リニアコライダーにかかる港の活用を検討したいとして、一時中断している。
参加者からは環境影響評価の項目に関し、「温度の高い水の排水による湾内の生態系への影響や、排ガス内のダイオキシンを取り上げないのか」との質問があった。
同社は「排水温は30度以下と考えており、市の浄化センターに持っていく計画。ほかの排水とともにセンターで適切に処理をして出すので、項目には選んでいない。ダイオキシンは全く発生しないとはいえないが、ごく少量で影響が出るほどではないと考えており、方法書には入れていなかった」と答えた。
漁業者の一人は、地下水の取水や温排水によるカキ養殖への影響を不安視。地元漁業者からも湾環境に関する意見聴取をするよう求め、計画への反対を主張した。
同工業用地をなぜ計画地に選定したのかとの質問もあり、同社は「建設業だけでは衰退してしまうとして、発電、再生可能エネルギーの部署を立ち上げ、検討を始めたときにこの土地があった。バイオマス燃料を海外から輸入しなければならない中で、ふ頭がすぐ横で適している。土地があることは分かっていた」と説明した。
また、県が昨年10月から公募を行う前に事業概要の届け出や第2種事業判定を実施している点、県や市からこの計画への説明がない点などを挙げ、「やり方がおかしい」と指摘する人も。同社は「今の時点では土地の応募もしておらず、買えるかどうかも分からないが、環境影響評価は土地の有無にかかわらず並行して進められるもの。土地が買えなければ、中止せざるをえない」との考えを示した。
同社は説明会や28日(金)までに市民から寄せられた意見書の内容を取りまとめ、県へ提出。環境影響評価の実施などに向けた手続きを行うとしている。