新人一騎打ち 激しく競る、住田町長選の選勢展望

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草の根型の追撃に勢い…水野候補

 

 住田町長選は告示から3日が経過し、いずれも新人で届け出順に獣医師・神田謙一候補(58)=下有住=と農業・水野英哉候補(61)=上有住=による激しい競り合いが展開されている。出馬表明が早かった神田候補は、後援会組織が活発に動き、全域で着実に支持拡大を進める。一方の水野候補は、出馬表明が後手に回ったものの、高い知名度からの浸透に加え、女性や青年支持者による独自の広がりに勢いが出てきた。両陣営とも、有権者の半数以上を占める世田米の集票に流動要素があるとみる。いまだ投票先を決めていない有権者は多いとみられ、23日(日)の投票に向けた終盤の攻防が注目される。

 

両陣営「カギは世田米」

 

 今町長選は昭和30年の町制施行から数えて通算17回目。これまで4期16年務めた現職・多田欣一町長(72)=世田米=は勇退を表明。16年ぶりの新リーダーを選ぶ戦いが展開されている。競争選は8年ぶり。新人同士による一騎打ちは初となった。
 両候補とも、多田町政の実績には一定の評価を寄せる。多田氏は後継指名や支持を明確にしていない。
 多田氏をはじめ、これまで町長は世田米地区在住者が続いていたが、今回の立候補者はなく、有権者数の半数超を占める同地区住民の取り込みが大きな注目点とされている。
 両陣営とも同地区では親戚筋や支援者のつながりなどから集票を図ってきたが、互いに決め手を欠いている状況。態度を固めていない浮動票が多いとみられ、混沌とした情勢が続く。
 両候補とも政党からの公認・推薦は受けていない。8年前の投票率は82・14%。両陣営から「今回も80%台では」といった声が聞かれる。しかし、今選挙から投票可能となった18、19歳、移動手段や足腰に不安を抱える高齢者の動向は予想が難しいとみている。

 

神 田 陣 営

 選挙初挑戦の神田候補は、昨年12月に出馬を表明。住田町農協や住田フーズなど、長年畜産業にかかわってきた中での人脈や親戚、地元・下有住地区住民らのつながりを生かし、支持拡大を図ってきた。
 今年1月には後援会「神田謙一と明日の住田を創る会」が発足し、地域回りを展開。ブロイラー事業で親交が深い泉金一氏=世田米=が後援会長に就き、総括責任者や選対本部長も務める。町議11人のうち、菊池孝議長と阿部祐一副議長、佐々木初雄、瀧本正德、佐々木春一、高橋靖の計6議員が支援に回ってきた。
 後援会や推薦者には、親族や下有住地区住民にとどまらず、多田氏の後援会幹部役員だった面々や事業所代表者、元町議らも名を連ねる。これまで神田候補は「住民生活の基本である『医・食・住』の充実」「都市と地方との格差解消」などを強調してきた。
 6月の事務所開きには130人、7月の総決起大会は320人を動員。後援会名簿も前哨戦中に1000人分以上が集まり、支持基盤づくりを着実に進めた。
 告示日を迎え、事務所前での第一声には約150人、その直後に世田米商店街で行った街頭演説では100人ほどが参集するなど、組織力の強さが表れた。
 一方、陣営内でも課題と言われ続けてきたのは「知名度不足」。地元の下有住を除き、候補本人や後援会とのつながりが弱い浮動層の取り込みは、未知数の部分が多い。世田米地区内では固い支持基盤ができつつあるが、世代や地域によっては偏りも指摘される。
 今後も支援者からのつながりを生かし、集票の動きを地道に進められるかが勝利のカギになりそうだ。街頭活動では青年層の帰宅時間に合わせた遊説などに力を入れ、豊富な企業経験を生かした政治姿勢などをアピールする考え。福祉分野の施策発信にも重点を置く。

 

水 野 陣 営

 水野候補は今年4月に出馬表明。20代からの多彩な青年団活動や町議会議長を務める中で培った経験、人脈を強みとしている。
 町議時代からの後援組織は5月に「水野ひでや後援会」と改称し、町内全域の支部体制を整えた。総括責任者は水野候補と同じ地元で、気仙川漁協組合長の高橋勲氏が務める。
 水野候補はこれまで、多田氏後援会の役員を務めてきた。同氏後援会関係者にも、一定の支持がある。地元・上有住地区住民や親戚、町議会議長を歴任した義父と親交がある知人らに加え、町議では佐々木信一、村上薫、林﨑幸正の3議員が支える。
 6月の事務所開きには60人、7月の総決起大会には180人を動員。告示後の第1声には、約150人が集まった。陣営では「住民が3人いれば街頭演説を行う」と、細やかな遊説に重点を置く。
 出馬表明後、自らの足で訪ねる地域回りを重視。神田候補よりも上回る知名度を生かした活動を進めた。上有住は、町議時代からの支援者や親戚筋らからの厚い支持がある。早朝時間帯には、妻・理恵子さんと辻立ちを行い、幅広い層からの支持獲得を狙ってきた。
 ただ、後援会強化に向けた動きでは、先行を許した神田陣営からの切り崩しは限定的。世田米地区では、自らの人脈や後援会関係者からのつながりで浸透を広げる半面、「手ごたえがよく分からない地域も多い」との声も聞かれる。
 前哨戦終盤以降は女性や青年層の支持者が自主的に動き出し、浮動層からの集票を目指す。こうした草の根的な運動に勢いが見られ、陣営全体の活気につながっている。
 遊説では高齢者の移動手段確保や保育充実など具体策を掲げ、町政に変革を求める層への浸透も意識。地域ごとの課題にも言及しながら「確かな実績と行動力」への理解拡大を図る。