環境保全の推進誓う、大船渡発電と市が協定調印/大船渡(別写真あり)

▲ 「環境の保全に関する協定書」を結んだ(右から)戸田市長、伊沢取締役、金野会長=大船渡市役所

太平洋セ大船渡工場内に発電所


 大船渡市赤崎町の太平洋セメント㈱大船渡工場敷地内にバイオマス発電所を建設し、電力卸供給事業を計画する大船渡発電㈱(相良安廣社長)と市は27日、「環境の保全に関する協定書」を調印した。市役所で行われた式には同社、市、立会人の赤崎地区振興協議会の関係者らが出席し、公害防止や環境負荷の低減などを目的とした協定を締結。同社は周辺環境に配慮した稼働を約束した。発電所は9月に着工し、平成31年内の本格稼働を計画している。

 

31年内の本格稼働計画

9月に起工式を予定

 

 大船渡市は平成13年、市民の健康で快適な生活の確保に寄与することを目的に市環境基本条例を制定。環境の保全に関する協定は同条例第13条の規定に基づくもので、地元の地域や漁協関係者ら立ち会いのもと、市と対象事業者などが締結している。今回が38カ所目の協定調印となった。
 大船渡発電㈱は、太平洋セメントが昨年8月、電力供給会社のイーレックス㈱と設立。東日本大震災で被災、休止した大船渡工場内の発電所再建と、新たな売電事業への参画を目的に、バイオマス発電事業を担う。
 発電所は、大船渡工場敷地内の旧事務所跡地(面積約1500平方㍍)に建設。循環流動層ボイラと再熱式蒸気タービンを採用した発電施設で、主な燃料にはパームヤシ殻と、パームオイル搾油工程で従来廃棄されていたパーム空果房(くうかぼう)を用いる。
 発電出力は国内最大規模の75メガワット、年間発電量は約48万メガワットアワーで、一般家庭約11万世帯分の電力消費量に相当。発電した電力は全量イーレックスへ売却し、同工場が必要分の電力を購入する。
 調印式には、同社から伊沢良仁取締役、市からは戸田公明市長、髙泰久副市長、佐藤高廣統括監らが出席。赤崎地区振興協議会の金野律夫会長が立会人を務めた。
 伊沢取締役(署名は相良社長)、戸田市長、金野会長はそれぞれ、用意された3通の協定書に署名し押印。3者で握手を交わし、協定を締結した。
 戸田市長は「大船渡発電が市と連携、協力し、環境保全にかかる活動に取り組むことは、環境未来都市を標ぼうする本市にとって、環境施策を推進していくうえでも誠に意義深い。市としても協定を契機に、持続可能な循環型社会の形成に取り組んでいきたい」とあいさつ。
 伊沢取締役は「何より大事なのは、この地域の環境負荷を上げないこと。基本的な設計思想として、排気や水の関係、騒音などを震災前の大船渡工場全体の操業状況より決して上げないよう計画した。事業運営後も確実に約束を守る姿勢で、従業員一同務めていきたい」と誓いを新たにした。
 金野会長は「赤崎地区と太平洋セメントとは長いつきあいであり、市にとっても必要な基幹産業と認識している。今後において環境問題が悪化することがないよう、趣旨を理解して取り組んでもらいたい」と話していた。
 今回締結した協定の概要は、▽環境保全にかかる目標等の設定▽環境の負荷低減、資源循環、エネルギーの効率化等の推進▽環境保全体制の整備及び環境教育の充実▽環境保全に関する施策等への相互協力──の4点。
 このうち、環境保全にかかる目標値では、市と大船渡発電が発電所稼働後における大気(ばいじん濃度、硫黄酸化物排出量、窒素酸化物濃度)、水質(水素イオン濃度、浮遊粒子状物質、油分)、騒音(午前8時~午後7時、午後7時~午前8時)でそれぞれ基準値を協議。同社はこれを下回る値を定めている。
 同社によると、今後は9月初旬に発電所の起工式を予定。2年にわたる建設工事を経て、31年秋に試運転を行い、同年内の本格稼働を目指す。