学びを深め 身近な存在に、 教員のための博物館の日/大船渡で初開催(別写真あり)

▲ 講演会「ワカメの生物学」では標本なども交えて解説=市立博物館

 大船渡市末崎町の市立博物館(小松伸也館長)による「教員のための博物館の日2017in大船渡」は28日、同館で開かれた。気仙管内の小中学校教員らを対象に、同館のさまざまな学習資源を知ってもらおうと初めて企画。講演会やワークショップ、同館学芸員による館内ツアーなどが行われ、参加した教員らは海の動植物に関する学びを深めたり、館内の貴重な展示資料に触れて博物館をより身近な存在とした。

 

 学校教育への活用図る

 

 地域に関する貴重な資料を展示、所蔵する市立博物館。展示や各種観察会などにとどまらず、学校教育の中で資料の活用を図る「博物館スクール」、学習相談なども行っている。
 「教員のための博物館の日」は、全国各地の博物館が独立行政法人国立科学博物館(科博)と公益財団法人日本博物館協会と共催して実施する事業。教員が博物館へ来館して親近感を持ち、館内の学習資源に理解を深めてもらい、学校教育における利用促進を図ろうとの狙いがある。本年度は全国32カ所で実施、予定されている。
 市立博物館ではこれまで、科博と連携した〝コラボミュージアム〟事業などを開催。本年度は新たな取り組みとして、科博と連携協働して今回の事業を行うこととなった。
 実施に当たっては、北里大学海洋生命科学部水圏生態学研究室も協力。この日は、A展示室・資料ツアー、B講演会「ワカメの生物学」、Cワークショップ「イカのひみつをさぐろう」、D収蔵庫・資料ツアーの4プログラムを用意。気仙3市町の小中学校から教員49人が参加した。
 このうち、講演会は科博植物研究部の北山大樹研究主幹を講師に迎えて展開。気仙沿岸部での養殖が盛んなワカメをテーマに、海藻の多様性、ワカメの生活などを紹介した。
 ワカメの一生では「ワカメの子どもはワカメではない」として、春にメカブから放出された大量の遊走子(べん毛を持って遊泳する胞子)が秋に成熟し、メスは卵、オスは精子をつくると解説。卵と精子が受精し、受精卵が発芽することでまたワカメとして成長するという、2種類の世代を交代させている生物であると説明した。
 参加者らは質問も交えながら、熱心に聴講。陸前高田市立第一中学校で理科を教える西條淳教諭(47)は「ワカメが植物の中で非常に特殊な進化をしたものであると分かり、授業の中で話をしていきたいと思った。非常にいい経験ができた」と話していた。
 このほか、AとDは市立博物館の学芸員から解説を受け、館内や収蔵庫内を見学。ワークショップでは、北里大学の朝日田卓教授から解剖なども交えてイカの生態を学んだ。
 小松館長は「最近は博物館スクールの利用も減少傾向にある。この機会を通じ、先生方に博物館に興味、親しみをもってもらい、活用につながれば」と期待を寄せていた。