「いわてリアス宣言」推進へ、本県沿岸復興工事関係者が発注・受注の垣根越え連携
平成29年7月29日付 1面
復旧・復興工事にかかる過重労働解消を目指し、気仙地区内の行政機関など工事発注者と受注の施工業者らが昨年5月に採択した「気仙宣言」。現場の土曜閉所や定時退社を促すなどの取り組みを受発注者が連携して推進し、働きやすい環境構築を図るもの。岩手労働局(久古谷敏行局長)はこの取り組みをさらに広げようと28日、釜石市新町の県沿岸広域振興局で本県沿岸の関係機関・団体による会議を開催。気仙宣言を「いわてリアス宣言」として拡大し、一丸となって過重労働防止に臨むことを決めた。
気仙モデルで過重労働解消を
「復旧・復興工事の過重労働を容認しない」とうたう気仙宣言は、昨年3月に大船渡市内の復興工事現場であった過重労働による突然死を契機とし、再発防止に向け大船渡労働基準監督署(熊谷久署長)の呼びかけで受発注者12者が参集した昨年5月の「気仙会議」席上、採択されたもの。
宣言に基づく取り組みの実効性を上げようと、実務担当者レベルのフォローアップ会合を定期的に開き、宣言に基づく取り組みの効果検証も展開。定期的な土曜閉所や定時退社実施機会の増、月80時間超残業者の減少など、過重労働解消に一定の効果があった。
県沿岸で現在も大規模な復興工事が盛んに行われ、過重労働防止の取り組みが引き続き求められる中、労働局は気仙宣言を「いわてリアス宣言」として全域に広げようと、大船渡、釜石、宮古、二戸の各労基署管内の工事発注者と施工業者、建設関係団体に呼びかけ、同日の会議を開いた。
国や県、沿岸市町村、施工業者、建設業関係団体、電気や通信、交通などの公共機関など42機関と、労働局と大船渡、釜石、宮古、二戸各労基署の代表者ら合わせて約60人が出席。
震災や復旧・復興工事で亡くなった人に出席者全員で黙とうをささげたあと、久古谷局長は震災から6年4カ月を経てもなお多くの工事が行われ、建設業は深刻な人手不足となっていることに触れ、「昨年実施した県内の建設業一斉監督では123現場中、月80時間を超える時間外あるいは休日労働が認められる現場が4現場あり、過重労働による健康障害発生の懸念がある。復旧・復興工事における現実を絶対に変えるという決意を共通認識としたい」とあいさつした。
熊谷大船渡労基署長と、共同企業体を組成して陸前高田市の土地区画整理などを担う清水建設㈱の小出直剛作業所長が、気仙宣言採択までの経緯やその後の展開、宣言に基づき実施した土曜閉所や定時退社、勤務状況の正確な把握の進め方について報告した。
引き続き、労働局の宮﨑一彦監督課長が▽過重労働を容認しない▽適正な労働時間管理や過重労働の未然防止に向けた職場環境づくりに協力して取り組む▽取り組みを他地域に発信する──の3本柱からなるリアス宣言と、これに基づく取り組みの案について説明し、全員の賛同で採択となった。
今後、宣言を周知するポスターも作るなどしながら、気仙宣言同様に月1回以上の土曜閉所と定時退社、月80時間超残業の労働者減を重点実施事項に設定し、効果検証も行っていく。
この中で、発注者には請負金額や工期適正化、施工業者には支店や作業所のトップによる決意表明、関係団体には周知や指導・啓発など、それぞれの立場から宣言の実効性を上げる対応をとるよう求める。