本格運用がスタート、水門等の自動閉鎖システム/赤崎町の合足農地海岸(動画、別写真あり)

▲ 水門・陸こう自動閉鎖システムの運用が開始された合足農地海岸=赤崎町

 県は31日、大船渡市赤崎町の合足農地海岸、宮古市の神林海岸、高浜海岸で「水門・陸こう自動閉鎖システム」の本格運用を開始した。東日本大震災を教訓に、消防団員が水門・陸こうの閉鎖作業で津波災害に巻き込まれないよう自動化を図るもの。県は平成31年度内を目標に、県内約220基の水門・陸こうで自動閉鎖システムを導入していく。

 

東日本大震災を教訓に県が導入


 同システムは、国が発令する津波注意報・警報を統制局(県庁、釜石合同庁舎)が全国瞬時警報システム(Jアラート)で受信すると、衛星回線を通じて施設に閉鎖命令が出され、自動で水門・陸こうが閉鎖されるもの。
 本県沿岸部の水門・陸こう約520基のうち、約300基は常時閉鎖やフラップゲート式となり、残る約220基が自動閉鎖の対象となっている。衛星通信を活用して220基の水門・陸こうを一斉に制御するのは、全国的にも事例のない先進的な取り組み。
 合足漁港に臨み、後背地に農地が広がる合足農地海岸は、震災の津波で東京湾平均海面を基準とした高さ9・0㍍の防潮堤が崩壊。県により、25年3月から復旧工事が進められている。
 復旧延長は234㍍で、防潮堤の高さは従前より5・1㍍高い14・1㍍。水門、陸こうはそれぞれ1基ずつある。
 震災により、本県では水門・陸こうの閉鎖作業に当たった消防団員48人が犠牲になった。県では消防団員が現地へ向かうことのないよう自動閉鎖システムを導入し、安全かつ迅速・確実な閉鎖につなげる考え。
 自動で閉鎖されるため、冬季や夜間でも確実な閉鎖が可能で、閉鎖開始前にはサイレンや音声、回転灯、電光掲示板などで閉鎖を知らせるほか、避難が遅れた場合でも階段などで陸側に避難することができる。3海岸のうち、合足農地海岸では4月から試験運用が行われてきた。
 同日は、盛岡市の県庁で運用開始イベントを実施。達増拓也知事、戸田公明大船渡市長、山口公正宮古市副市長のほか、新沼哲大船渡市消防団長、山下修治宮古市消防団長など約20人が出席した。
 はじめに、達増知事と両消防団長が午後1時23分ごろにJアラートの模擬信号を送信し、水門・陸こうを閉鎖。閉鎖状況をマルチモニターで一斉に放映したあと、達増知事がシステムの運用開始を宣言した。
 この日は、合足農地海岸にも県職員らが見学に訪れ、自動閉鎖の様子を見守っていた。
 県県土整備部河川課の岩渕和弘総括課長(58)は「引き続き関係機関と連携を図り、早期完成を目指したい」と話していた。