どう生かす「地域創造学」、各校での中間研究発表/住田町

▲ 渋谷氏㊧のアドバイスに耳を傾ける教育関係者=住田町役場

 住田町教育研究所全体会・部会は1日、町役場町民ホールで開かれた。本年度、町内の小中高校5校が文部科学省の研究開発学校に新規指定され、各校と町教育委員会が連携しながら新設教科「地域創造学」(仮称)の研究を進めている。この日は、子どもたちの伸ばしたい資質や能力について各小中学校の担当教諭らが中間発表。地域創造学の意義や方向性に関する講演も行われ、教職員らは保育園を含めた教育現場での実践に向けて意識を高めた。

 

開発学校指定受け


 研究所全体会は町教委と町教育研究所が主催。「自立して生き抜く力」をはぐくむ保・小・中・高の連携体制を土台とする豊かな学びの実現に向け、教職員の指導力や資質向上を目的としている。
 文部科学省から新規に研究開発学校指定を受けた。研究開発学校制度は、現行基準によらない教育課程の編成や実施が認められるもの。世田米小、有住小、世田米中、有住中、県立住田高校の町内5校が対象で、県内での小・中・高連携による認定は初めて。新設教科「地域創造学」(仮称)の研究に着手している。
 町は、平成15年度から10年以上にわたり、幼児から高齢者まで各年代に対応した「森林環境教育」を展開。英語活動にも力を入れている。こうした取り組みを基盤とし、自律的活動力、人間関係形成力、社会参画力からなる「社会的実践力」の成長を目指す。
 全体会には、各小中高校の教職員ら約70人が出席。町教育研究所の所長を務める菊池宏教育長が「1学期には各学校で熱心に議論していただいた。誰もやったことがない挑戦で、産みの苦しみがあるからこそ、達成時の喜びは大きいのでは」とあいさつした。
 各校ごとに「地域創造学で育みたい資質・能力について」として、校内研究の内容を中間発表。教諭間での意見交換などで寄せられた気づき、課題が示された。
 これまで、子どもたちに身につけたい力を整理し、成長段階に応じた指導や、どういったかかわりが必要かなどを議論。発表では「教員自身が住田を知らないと計画づくりに生かされない」「思考の転換や柔軟さが必要」といった指摘が寄せられた。
 また、住田高校では授業以外でも町内でのボランティア活動や海外派遣研修があり「社会的実践力をはぐくむには有効。これらをどのように地域創造学に盛り込んでいくかも重要では」といった声も。出席者からは「ある程度の枠組みや、おおざっぱでも共通したものが必要では」との発言もあり、各学校間での方針共有や連携の重要性も浮き彫りとなった。
 引き続き「住田町における『地域創造学』の意義と今後への期待」と題し、文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官の渋谷一典氏が講師を務めた。
 渋谷氏は講演に先立ち、中間発表の内容についてコメント。「保育園から高校までがつながった研究をしようとしている大きなチャレンジ。この町にいる子どもたちは、とても幸せだと思う」と述べ、今後の取り組みに期待を寄せた。
 講演では、研究開発学校制度の概要を示し、小学校での「生活科」教科設置などに生かされてきた成果を紹介。今年3月改訂の小・中学校の学習指導要領が目指す方向性にも言及しながら「地域創造学」の充実につながるヒントを送った。
 終了後は、各校の教職員が森林環境学習、グローバル学習、いのちの学習、就学前教育の各部会に分かれ、今後の方向性を議論。平成30年度~32年度には実際に授業を実施し、教育課程や指導方法の確立を目指すことにしており、参加者は「住田らしさ」を意識しながらさらなる充実の方向性を探った。