住民説明会を「総括」、三木・ランバー問題で/住田町議会

▲ 早期経営安定化が求められる2事業体が入る木工団地=世田米

 住田町議会全員協議会は2日、町議会議員控室で行われた。4日(金)に退任する多田欣一町長の任期内では最後の開催となり、町が先月24~28日に行った三陸木材高次加工協同組合(三木)と協同組合さんりくランバー(ランバー)対応を巡る住民説明会の総括が議題となった。多田町長らは調停を進め、同じく木工団地を構成するけせんプレカット協同組合(プレカット)との一体経営を進める「道筋」を強調。描いた道筋がスムーズに進むかは、5日(土)から新任期を迎える神田謙一新町長下での運営に委ねられる。

 

多田町政下では最後の全協

 

 全員協議会は非公開。菊池孝議長によると、先月の町議補選で初当選を飾った荻原勝議員を含め、12議員全員が出席した。町側は多田町長や横澤孝副町長らが臨み、三木・ランバー問題を巡る住民説明会の総括を行ったという。40分ほどで終了した。
 終了後、多田町長は「説明会ではいろいろな意見が寄せられたが、町の債権回収と2事業体の早期経営再建を進めるために調停を進め、さらにプレカットとの早期一体経営を図る方針は、ご理解いただけたと認識している」と話した。
 4期16年町長を務め、融資時からの経緯を知る中、全員協議会では議員から今後どうかかわっていくかを質す発言も出たという。これに対して多田町長は「(任期終了後は)権限はないが、債権回収と事業体の再建、経営一本化に向け、何かお手伝いができれば」と語る。
 住民説明会は、町長選投開票翌日の先月24日からスタート。下有住、大股、五葉、上有住、世田米の各地区で行われ、延べ160人余りが出席した。町議も各会場に足を運び、説明や住民意見に耳を傾けた。
 町は平成18年4月、19年10月、20年1月、両事業体に合わせて7億9000万円を融資。26年度から年度当たり約3100万円を町へ償還する計画だったが、27年度内の償還は222万円。28年度は450万円にとどまった。
 これとは別に、集成材加工施設賃借料は6829万円、19~27年度の町有林原木未納額は2億2584万円に上る。両事業体の26~28年度決算が赤字となる中、町側は事業運営からの回収は厳しいと判断。先月11日の臨時議会で、貸付金残金など計10億円超の支払いを求める調停を申し立てる議案を可決した。
 町側は調停によって債務整理を図り、両事業体を継続させて対外的信頼を確保したい考え。雇用を守り、林業をはじめ経済活動の失速を防がなければいけないとの姿勢も掲げる。
 説明会では、三木とランバーが抱える金融機関の債務約2~3億円をプレカットが背負い、両事業体の経営を担う姿勢を示していると説明。三木、ランバーの現理事が退任し、今後はプレカットの理事に両事業体に入ってもらい、一体経営の道筋をつくっていきたいとする現段階での町側の意向も明らかになった。
 一方、町側は臨時会後速やかに調停の申し立てに入る構えだったが、簡易裁判所への手続きは2日時点では終わっていない。説明会では、両事業体が新代表理事就任に伴う変更登記を終えておらず、町側が描くシナリオから遅れている現状も浮かび上がった。
 全員協議会終了後、議員からは「登記をはじめ、事業体の体制整備が最重要。今、一番心配なのは、従業員。心配、動揺しないようにケアをしていかなければ」「まだ調停による連帯保証人らへの請求額が出ているわけではない。中身が分からずに、最初から反対とはいかない」といった声が聞かれた。
 説明会では住民から、議会議決後に説明会が開催されたことにも厳しい意見が出た。別の議員は「議決前に住民説明会を行い、その意見を参考にしながら議決に臨む流れが理想。その手順を重ねないと、町民の不満も膨らむ」と、今後への教訓を指摘する。
 住民からは10年前の融資対応について「甘い対応だったのでは」との発言をはじめ、融資決定時のプロセスのほか、その後の町対応や事業体運営に対する疑問も寄せられた。
 5日から始まる神田町政下では、多田町政が描いた道筋をスムーズに引き継げるかや、町民理解をさらに得られるかが大きな課題となる。