調和を意識した整備を、昭和橋架け替えなどで議論/住田町
平成29年8月10日付 1面
住田町では初となる地域デザイン会議が9日、町役場で開かれた。公共施設の再編や伝統的な街並み活用の共存など、調和がとれた魅力ある整備を目指そうと庁内各部局職員や学識経験者が横断的に集まる場として設置。この日は、昭和橋の架け替えなどについて意見交換が行われた。開催を通じて町職員の企画力向上や積極的な情報公開・共有を図り、総合的なまちづくりの充実につなげる。
初の地域デザイン会議
町は昨年度、移転新築を進める大船渡消防署住田分署の設計に合わせ、周辺部の景観も意識した会議を開催。職員らは世田米商店街周辺を巡る「まち歩き」も行い、藩政時代からの歴史がある建物や自然風景を生かした公共整備の方向性を探ってきた。
この中で、今後周辺で施工されるハード事業に向けては、構想段階から役場内部で情報共有を密にし、有識者のアドバイスも交えて総合的な観点で検討する重要性が浮き彫りに。調和がとれた魅力あるまちづくりや、町職員の企画力向上を図ろうと地域デザイン会議を設けた。
委員のうち、学識経験者は大月敏雄氏(東京大学大学院工学系建築学専攻教授)藤田香織氏(同准教授、欠席)柴田久氏(福岡大学工学部社会デザイン工学科教授)南雲勝志氏(ナグモデザイン事務所代表)の4人。この日は総務、企画財政、町民生活、保健福祉、農政、林政、建設各課や教育委員会の職員、気仙川の治水対策を担当する県住田整備事務所職員らを含め、約20人が出席した。
冒頭、神田謙一町長は「小さい町だからこそ、総合的な考え方の中で、景観を生かした街並みを将来のためにつくっていかなければならない」とあいさつ。協議ではとくに、気仙川に架かる昭和橋の架け替えについて時間が割かれた。
昭和橋は商店街と役場周辺部をつなぐ町道橋で、昭和8年に整備。小中学生や高齢者の歩行が多く見られる一方、歩道がなく車両同士のすれ違いができない。古里らしさを感じさせる外観など、重要な歴史的資源として町外の人々からも愛着を集める。
県が気仙川の治水対策を進める中、現在の橋脚幅では流木などが引っかかり、周辺への浸水被害拡大が懸念される。住民説明会を開催するなどして架け替えの必要性には理解が広がっているものの、地域住民からは歩道を設置すべきといった意見や救急車両通行、バスルート化などへの期待から2車線化を望む声も寄せられている。
町側は、現在昭和橋があるルートを中心とした架け替えで検討を進めているとしたほか、幅員などに関しては住民らから多岐にわたる要望があると説明。デザインは、新たな位置と幅員を決めた後で検討する方向性が示された。
大月氏は、交通量や歩行者が多い時間帯など、より詳細な調査が必要と指摘。さらに「なぜここまで議論が必要かというと、今の昭和橋が良い橋だから。どの部分が良さなのかをもっと詰めていくことは、今後のデザインにおいても重要。写真コンテストなどで良さを引き出し、将来の整備につなげるのは重要では」と述べた。
柴田氏は橋そのものだけでなく、堤防など周辺整備も含めた総合的な議論の重要性を強調。南雲氏は「『こんな橋が今の時代によくできたね』と思わせる整備こそが、住田らしさにつながる」と、美しさと安全性の両面を追い求めたこだわりの大切さにふれた。
住民ワークショップの開催など、より丁寧な意見交換や情報共有を踏まえた設計の重要性も話題に。建設課以外の町職員も景観や仮橋のあり方で発言するなど、積極的な意見交換が行われた。
次回のデザイン会議は11月の予定。昭和橋の架け替えに関しては今後、住民らからも意見を求めながら、整備方針を固める。