早くも来館2万人、市立図書館に注目集まる/陸前高田
平成29年8月20日付 7面

今月3日までに1万人以上の入館を記録した陸前高田市立図書館(戸羽良一館長)は、19日に早くも来館者2万人を達成した。7月20日のオープンからまだ1カ月。人口およそ1万9000人ほどの同市においては、異例ともいえるスピードで利用者を伸ばし続けている。市内外からの関心が新施設に寄せられる一方、同館は震災前に行っていた定例の読み聞かせ会を9月から再開するなど、〝目新しさ〟だけに頼らず、文化施設としての本来の役割充実、市民がなごめる空間づくりにも力を注ぐ。
きょうでオープン1カ月
読み聞かせも秋から再開
高田町の大型商業施設アバッセたかたに併設する形で整備され、児童生徒の夏休み入り前に待望のオープンを果たした同館。建物の入り口3カ所に設置されている機器が出入りする人を計測しており、19日に2万人を数えたという。
開館から2週間ほど経過した3日に1万人をカウントした際も、職員らは予想以上のペースに驚いたというが、1カ月弱でその倍に。市民らの一般利用はもちろん、大きな要因としては、県内外からの団体視察のほか、お盆に帰省客らが多く訪れたことがあるという。盆期間中は一日あたり1000人を超える人が来館した日もあった。
「被災してご自宅がなく、旅館などに泊まっておられる方もいる。そうした方が日中に遊びにいらっしゃるケースもあったようだ」と同館司書の元木香代さん。帰省した人にも利用登録を呼びかけたところ、積極的にカードを作ってくれたという。
さらに、気仙沼市など市外からの利用、貸し出しも多くみられる。開館から18日までの登録者数は、事前登録も含め1679人。このうち324人が帰省者を含む市外在住者となっている。
山田市雄教育長は、「夏休みやお盆など、さまざまな要素が絡んでのことではあるが、それにつけても好スタートを切ることができた。市は交流人口拡大も目指しているところなので、市外の利用者が多いこともありがたい」と喜ぶ。
また、正面玄関、カフェに通じる出入り口、アバッセ側出入り口と3カ所あるうち、3分の2以上がアバッセ側から入館しているといい、商業施設の買い物袋をさげた人の姿も。山田教育長も「買い物の〝ついで利用〟によって、相乗効果が生まれている」とみる。隣接する「まちなか広場」へ遊びに来た親子の図書館利用など、中心市街地にある施設を〝はしご〟する流れもみられる。
9月からは、震災によって中断されていた同館主催の「おはなし会」が約6年半ぶりに再開される。「幼児・小学生向け」「乳幼児向け」として、当面月2回ペースで行われ、市内の読書ボランティアらが担当する。10月には絵本作家によるワークショップが開かれるなど、子どもを中心にすえた読書環境の充実にも注力する。
大人向けのイベント企画も計画されているが、主任司書の田中里枝子さんは「〝花火を上げ〟て人を寄せるだけでなく、普段利用してくださる方一人一人を大切に、居心地のいい場所にしたい」という。利用者からも「職員さんが親切」と評判の同館。新しい本も毎週のように棚へ並べられており、職員たちは「いつ行っても楽しみがあり、安らげる図書館」を目指して創意工夫を重ねている。