世田米商店街の充実へ、景観事業と「木いく」連携/住田町

▲ 道路の正面に対して屋根の三角形状が見える「妻入り」の家屋が多い世田米商店街沿い。古き良きたたずまいがある=世田米

 住田町では本年度、教育委員会による景観まちづくり関連プロジェクトと、町が進める木いくプロジェクトが連携し、世田米商店街の古き良き景観を生かした取り組みの充実を図る。まずは街並みにふさわしい案内表示など、風景の一部としても活用される「ものづくり」を進める方針。街並みに誇りを持つ住民意識のさらなる醸成に加え、商店街や住田全体の活性化につながるかが注目される。

 

〝古き良さ〟活用見据え

 

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景観まちづくりの連携を見据えた会議=同

 世田米地区は江戸時代、種山峠を越えて気仙郡に入り、世田米宿から白石峠を越えて盛宿に通じる盛街道の宿場町として栄えた。内陸と沿岸を結ぶ重要な役割を果たし、その名残が今も独特の古き良きまち並みとして息づく。

 商店街沿いを中心に、今も宿場町時の姿をとどめる町家が十数棟あり、周辺には独特のたたずまいがある蔵も多い。これまで町教委は、豊かな経験や貴重な建造物をまちづくりに活用する方向性を学ぶ講演会などを企画してきた。
 一方、町当局でも昨年度、職員を対象とした「景観まち歩き」「景観まちづくり講習会」を開催。商店街と裏通りの段差状になっている「高低差」や蔵修復の必要性、生活感のある風景をどう生かすかなどについて、今後の方向性を探った。
 さらに町は「森林・林業日本一のまちづくり」を掲げる中、平成27年に始動した木いくプロジェクトでも特色あふれる取り組みを展開。町産木材と技術を生かしたデザインを求め、これまで町内小中学校用の学校家具や新生児向け玩具、役場内家具などを制作した。
 本年度は、教育委員会と町が進めるプロジェクトが互いに連携し、景観を生かしたまちづくりを進めようと会議を設置。このほど開かれた初会合には、学識経験者として「木いく」にかかわるナグモデザイン事務所の南雲勝志代表=東京都、町職員や町内の多彩な活動を支える一般社団法人邑サポート、昨年6月に発足した住民団体「せたまい町歩きガイド」の各関係者ら18人が参加した。
 協議では本年度の取り組みとして、世田米商店街での「サインづくり」に取り組む方向性を確認。風景に調和した表示を目指し、案内・回遊ルートの検討やデザインについて考えるワークショップを今後随時開催し、試作品づくりにつなげる。
 出席者からは「日本中のまちが同じようなつくりになりつつある中、個性が残る住田の良さを生かした取り組みを」といった声が出るなど、受け継がれてきた景観活用を見据え意見交換。「あえて狭い路地を歩くのも良さでは」「古い家々にある『自慢のもの』を紹介できれば」といった発言もあった。
 同ガイド代表の佐々木忍さん(71)=世田米=は「例えば光勝寺や、庚申塚にも案内表示があればいいと思う。まちに来た人たちが自然に目にすることができれば」と話す。商店街周辺のまち歩きは1時間程度が望ましいといい、ベンチ設置など高齢者らへの配慮に加え、まち歩きと合わせた周辺施設利用や消費などにも期待を込める。
 さらに「以前は、蔵並みライトアップぐらいしか良さが分からなかったが、歩いてみて面白さに気づいた。小中学生や地元の人たちに良さを知ってほしい」と、さらなる関心喚起も見据える。
 世田米商店街では昨年、住民交流拠点施設・まち家世田米駅がオープンし、町内外の人々が訪れるにぎわい拠点に。隣接する家屋では毎週火曜日によりあいカフェ・しょうわばしが一昨年から開設され、高齢者らがなごやかに過ごす。いずれも歴史ある建物を活用し、住田らしい取り組みとして定着を見せる。
 今後は、こうした各施設のにぎわい魅力を、商店街全体の活気創出や交流人口拡大に生かすことが求められる。さらなる住民参画に加え、分野を超えた町内各種団体間の連携などに注目が集まる。