建設進む津波防災拠点施設、供用開始は来年春の予定/大船渡駅周辺地区

▲ 建設工事が進み、建物の姿が現れてきた津波防災拠点施設=大船渡町

 大船渡市が大船渡町のJR大船渡駅前に整備する「津波防災拠点施設および津波復興拠点支援施設」(以下、津波防災拠点施設)は、本年度内の完成を目指して建設工事が進んでいる。平常時は市民交流や大船渡の魅力発信、津波伝承などの場となり、津波発生時には一時的な緊急避難場所としての機能も備える。建設工事は順調に進んでおり、今後はコンクリート打設や内装などを計画。供用開始は平成30年春の予定で、新たな中心市街地における地域づくり拠点としての活用が期待される。

 

 新たな地域づくり拠点に

 

 津波防災拠点施設は、同町茶屋前の交通広場北側に建設。昨年12月に着工し、高さ3㍍にかさ上げした敷地(面積5648平方㍍)に、鉄筋コンクリート造3階建ての施設を整備する。
 施設の延床面積は3200平方㍍で、このうち1階ピロティと3階休憩スペース、屋上スペース等を除く室内床面積は1842平方㍍。屋上までの高さは17・35㍍ある。屋外には、芝生の多目的広場(面積2125平方㍍)、駐車場も設ける。
 工事業務は、市が24年に「東日本大震災に係る大船渡市復興事業の推進に関する協力協定」を締結した、独立行政法人都市再生機構(UR)に委託。設計は㈱NTTファシリティーズ、監理は㈱日東設計事務所、施工は東急建設・明和土木特定建設工事共同企業体(JV)が担う。整備費は19億8882万円で、国の東日本大震災復興交付金による基幹事業と効果促進事業を活用する。
 施設には、平常時と災害時でそれぞれの利用目的を設定。平常時には、▽地域づくり(子どもや子育て世代の交流、高齢者の憩い、市民活動、情報発信の場)▽津波伝承(次世代に災害の教訓を伝え、防災力を高める学びの場)▽観光交流(大船渡の魅力を伝える観光総合案内)▽都市間交流(震災を機に生まれた交流を育み、互いの未来をつくる場)──としての目的を持たせる。
 目的に合わせ、施設の1階には市内の観光情報や物産を案内する観光交流施設を配置。ピロティでは朝市やフリーマーケット、ワークショップなどの利用を想定する。
 2階には多目的室や和室、喫茶・給湯スペース、会議室、自習スペース、展示室、スタジオ、授乳室、東西の入り口を横断して各室を結び、それぞれの部屋での活動が見えやすい〝通り〟としたコラボストリートを整備する。
 利用者のニーズ変化に対応できるよう、可動式の壁や間仕切りを採用した部屋の分割活用、コラボストリートとの一体的な利用をイメージ。展示室や多目的室には、津波など災害の教訓、高台へ逃げることの重要性を伝える場としての役割も持たせる。
 3階には、災害時の利用目的である「万が一のときの一時避難場所」としての機能を備える。津波発生時に高台へ逃げ遅れた場合の緊急避難場所となり、屋外大階段は夜間でも利用可能。平常時は、展望デッキとして大船渡湾が望める場、休憩スペースとして利用できる。
 着工から9カ月近くがたち、建設現場では施設の姿が少しずつ現れている。市大船渡駅周辺整備室では「工事はいまのところ順調に進んでいる」としており、来月初めにはコンクリート打設作業が始まる計画。年内には外観にめどがつき、内装工事も進められていくという。
 施設の整備に合わせ、今後は具体的な利用のあり方といったソフト面の取り組みも本格化。市は来月開会の市議会9月定例会に施設の設置条例案を提出する予定で、議決されれば指定管理者の公募を行う計画としている。
 施設完成後は、子どもから高齢者まで世代を超えた利用が可能となり、市民による地域づくり拠点、新たなにぎわい創出の場としての期待も高まる。建設工事の工期は30年3月20日までで、同年春の供用開始を予定している。