「気仙史」発刊へ始動、行政など要職経験の4氏が歴史文化研究会を設立/大船渡で初会議

▲ 「気仙史」の発刊を目指す歴史文化研究会を旗揚げ=大船渡市・カメリアホール

 気仙の行政や教育分野で要職を担ってきた4氏が26日、「気仙歴史文化研究会」を立ち上げた。東日本大震災で多くの歴史的資料が被災した中、これらを整理しながら、先人が築いた郷土の歴史を学び、後世に伝えていこうとの狙い。設立発起人で前大船渡市長の甘竹勝郎さん(73)=同市盛町=が会長に就き、幅広い世代に読まれる分かりやすい「気仙史」として一冊の本をまとめる。


「わかりやすい一冊に」

 

 同研究会のメンバーは甘竹さんのほか、前陸前高田市教育委員長の松坂泰盛さん(73)=陸前高田市気仙町、前住田町教育委員長の千葉英夫さん(74)=住田町世田米、合併前の旧三陸町と合併後の大船渡市で助役を務めた中村隆男さん(74)=大船渡市三陸町越喜来。
 甘竹さんと松坂さんは高校、千葉さんは中学校で社会科などの教べんをとって郷土史への造詣も深く、中村さんは特に旧三陸町政に精通する。それぞれ要職を引いたあとも、地域の歴史をひもとく活動などに取り組む。
 研究会の立ち上げは、震災で歴史的資料の被災もあったことを受け、甘竹さんが「この機会に先人が築いた貴重な史料を整理し、気仙の歴史をわかりやすく後世に伝えるものをまとめたい」と、昨年8月から各氏に呼びかけ、準備を進めてきたもの。
 設立会議は、大船渡市盛町のカメリアホールで開催。会則や役職、数年後に一冊の本にまとめる計画を決めた。
 会長には甘竹さん、副会長に松坂さん、事務局長に千葉さん、副事務局長に中村さんが就任。このほか、三陸町綾里の砂子浜大家・千田家に伝わる古文書調査や震災後の被災史料レスキューに携わってきた、東北大学災害科学国際研究所の蝦名裕一准教授を顧問に選任した。
 会議には蝦名准教授も出席。震災後に大学などの参加で展開される個人所有の被災史料保全活動に触れたうえ、「大船渡の近現代史にかかわるものなど、活動参加者の関心を集める史料もある。研究会の活動が、気仙の財産に改めてスポットを当て、歴史をつむいでいくきっかけになれば」と期待を寄せた。
 甘竹さんは「市史や町史はそれぞれあるが、普段は手にとられにくい。市町を超えた初めての取り組みであり、子どもからお年寄りまでが興味を持てるよう、わかりやすい『気仙史』としてまとめたい」と意欲的。
 「気仙の中世を知りたいという声も多くあり、まずは城めぐりから始めたい。震災後、あらゆる方面からレスキューや調査研究が入り、いままで分からなかったことも表になってきた。こうした新しい中身も取り入れていきたい」と話している。