北のミサイル日本上空通過、早朝の気仙にも緊張(別写真あり)
平成29年8月30日付 7面
29日午前5時58分ごろ、北朝鮮から弾道ミサイル1発が発射され、政府は全国瞬時警報システム「Jアラート」により自治体を通じて国民に警戒を呼びかけた。ミサイルは北海道上空を通過し、同6時12分ごろ襟裳岬の東およそ1180㌔の太平洋上に落下したとみられ、同日午後5時現在で被害は確認されていない。気仙地区で大きな混乱はなかったが、安全確認のため一部の学校が登校時間を遅らせ、交通機関が一時運転を見合わせるなど住民生活に影響を及ぼすとともに、不安の声が上がった。
初のJアラート発信も
学校や交通機関に影響、住民の間に不安広がる
Jアラートは、弾道ミサイル情報や大津波警報などの緊急情報について、市町村の防災行政無線を自動起動させるなどして国民へと瞬時に伝達するシステム。
政府がこれによるミサイル発射情報を出したのは、昨年2月の沖縄県以来。今回は北海道、本県含む東北6県、茨城、栃木、群馬、新潟、長野各県の12道県が対象地域とされた。
午前6時2分、聞き慣れないサイレン音とともに、「国民保護情報」として「北朝鮮からミサイルが発射された模様です。頑丈な建物や地下に避難して下さい」との呼びかけが、防災行政無線や携帯端末の緊急速報メール、テレビなどで発信された。
その後、同14分には「先程、この地域の上空をミサイルが通過した模様です。不審な物を発見した場合には、決して近寄らず、直ちに警察や消防などに連絡して下さい」と伝えた。
大船渡市は午前6時2分に緊急事態連絡室を設置。情報収集に当たり、市内に被害がなく安全確認がなされたとして同9時45分に廃止。市教育委員会によると、小中学校は通常通り授業を実施。スクールバス運行に支障はなかったという。
陸前高田市では市内11の小中学校のうち、スクールバスを利用する8校が安全確認がとれるまで運行を見合わせ、午前9時に再開。スクールバス利用者以外には自宅待機を呼びかけ、普段より1時間ほど遅れて授業を始めた。
住田町でもJアラートと連動してサイレンが鳴り、住民に警戒を呼びかけた。防災担当の町職員や幹部職員が役場に詰め、情報収集にあたったが、落下物などの確認はなかった。町内の小中高校ではいずれも、通常通り授業が行われた。
JR東日本盛岡支社によると、東北、秋田両新幹線と、大船渡線含む同支社管内六つの在来線は、午前6時2分ごろから安全確認のため運転を見合わせたが、同18分に各線区で再開。遅れは18本で、約4280人が影響を受けた。
三陸鉄道南リアス線は、午前5時48分盛発の始発便がJアラートを受けて恋し浜駅付近のトンネルに避難。乗客はいなかった。ミサイルの太平洋への落下情報を確認したあと運転再開したが、同8時15分まで上下線計4便に最大32分の遅れが出た。県交通路線バスに大きな影響はなかった。
かねて弾道ミサイル発射を繰り返してきた北朝鮮。平成21年には本県上空を通過したものも。最近では、日本の領土上空を通過し米国領のグアム島周辺へミサイルを発射する計画も公表していた。
この中での今回の発射について、大船渡市末崎町の女性(78)は「病院に行くために早起きしたら、聞いたことのないサイレンが鳴って驚いた。北朝鮮が騒いでばかりいるが、この状況では戦争になっていてもおかしくないのでは」と表情をこわばらせていた。
民生・児童委員を務める陸前高田市広田町の菅野タエ子さん(62)は、Jアラートのあと近所の高齢者宅などを見回るなどした。「戦争を経験した人は特におびえている。自然災害からは避難できても、人的災害については対策のとりようもなく不安。国同士、冷静に話し合いで解決してほしい」と話していた。