「小さな拠点」全地区に、課題解決・活性化担う協働組織/住田町
平成29年8月30日付 1面
住田町による本年度の新規事業「小さな拠点づくり」の一環で、世田米、大股、下有住、上有住、五葉の全地区に地域協働組織が立ち上がった。持続可能な地域づくりを見据えて住民が主体的に活動し、地域課題解決や活性化を図る役割が期待される。各地区とも現段階では活動の方向性は模索状態と言える中、今後は町が地域交付金として支給する年間80万円の活用策や、住民主体の行動をどう引き出すかが注目される。
住民の主体性 今後のカギ
町内では、5月に「上有住地区計画推進協議会」(村上薫会長)が町当局に地域交付金支給を申請。6月には下有住で「下有住いきいき活動協議会」(金野純一会長)が、世田米では「せたまいいきいきづくり」(菅野憲会長)が立ち上がった。
今月には、大股で「スマイルおおまた」(泉彰会長)が発足。五葉では「五葉地域づくり委員会」(川村勝人会長)が担い、26日夜には役員を務める地域住民が同地区公民館に集まり、地域課題や活動のアイデアを出し合った。
同委員会では、これまでにサクラを植樹した地域での草刈り活動や、毎年秋に行っているミニ運動会などを継続させる方針。さらには「地区公民館前のグラウンド整備」「一人暮らし世帯の見守りにつながるシステムづくり」「ナメコを栽培するなど、収益が地区活動に生かされる取り組み」といったアイデアが寄せられた。
下有住のいきいき活動協議会では、すでに動き出した新事業も。遊休農地を利用し、地域住民らが協働でソバを栽培。収穫後は各地で「そばうち会」を開催し、地区内外の人々が交流を深めるきっかけを生み出すことにしている。
町は「小さな拠点づくり」を進めることで、本来の住民自治の再興を描く。「小さな町でなければできないこと。小さい町だからできること」の実現を目指す。
町内人口は5700人余りで、年間100人程度のペースで減少。高齢化も進行し、地域の担い手の減少や、生活を営むうえでの困りごとの増加が懸念される。担い手となる住民にとっては、地域活動をかけ持ちするなど「負担感の増加」も課題になりつつある。
地域協働組織は、住民だれもが構成員になることができ、地域の身近な分野で役立つ活動を進める。また、全地区に配置されている地域おこし協力隊や集落支援員と連携。行政に加え、町内で仮設住宅団地のコミュニティーづくりなどを支えてきた一般社団法人邑サポートからも、運営面などで支援を受ける。
今後の活動では、住民の「暮らし満足度」向上を図る役割が期待されている。ただ、これまで地区公民館などが担ってきた役割との違いや町から支給される年間80万円の活用策、地域住民が抱える課題の吸い上げのあり方などは、まだ模索状態といえる。
町は各組織の役員、事務局を対象に連絡会議を設け、情報共有を図ることでスムーズな活動につなげる考え。他町での先進事例を学ぶ機会をつくることなども検討している。
各地区の活動を支える邑サポートの奈良朋彦代表理事(42)は「まだ自治という段階まではいかないが、組織づくりを通じて住民が地域の課題を議論するきっかけが生まれている」と評価する。
そのうえで「小さな拠点や小規模多機能型と呼ばれる組織が、何のために運営していくかの理解や浸透を図っていくことが大切。地域の皆さんによって、自立した形で組織を回していくことが理想だが、回せない要因がどこにあるのかを見定め、そこをうまく支えていくことができれば」と、今後を見据える。