住田のこだわりで風鈴を、伝統の製鉄法生かす

▲ 溶かした鉧を流し込む作業を見守る関係者=盛岡市
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試作品の釣鐘㊧と木型。今後さらに改良を重ねる=住田町

アツモリソウの形に

 

 住田たたら研究会(高木辰夫会長)は、町内で採れた餅鉄を原料とし、昔ながらのたたら製鉄で取り出した「鉧(けら)」による風鈴づくりに挑戦している。風鈴は町花であるアツモリソウをイメージし、木製の型づくりも地元の職人に依頼。地域資源を生かしたさわやかな音色によって、伝統を後世につなげていこうと、関係者は期待を膨らませる。

 

木型も地元職人に依頼

 

 住田にはかつて、現在の国道397号栗木トンネル近くに栗木鉄山が位置し、明治14年から大正9年まで稼働。それ以前の藩政期にも住田では、地元産の砂鉄を生かした製鉄が気仙ではいち早く行われ、地域の住民生活や農作業などを支えてきた。
 たたら製鉄は、木炭の燃焼熱で砂鉄などから還元する昔ながらの製造法。同研究会は7、8年ほど前から活動している。町内で餅鉄を確保し、有住小の製鉄体験にも協力するなど、伝統文化を伝え残す取り組みを地道に展開してきた。
 活動を重ね、研究会の中で「何か形に残したい」との希望が膨らんだ。まず思いついたのは、町花であるアツモリソウ。花の形に似た風鈴をつくろうと動き、町教委の協力を得た。
 製造には、高温で溶かした鉧を流し込む砂に形を映す型が必要となる。試行錯誤を続けていた中、同町上有住の五葉地区公民館付近に工房「五葉舎」を構える仏像彫刻師・佐々木公一さん(42)が引き受け、地元産のミズノキを材料に試作品を制作した。
 風鈴の鋳造作業は、盛岡市の岩手大学鋳造技術研究センターで29日に行われ、高木会長や佐々木さんらが訪問。木型で形を映した砂の中に、溶かした鉧を流し入れる工程などを見守った。
 何度か鋳造を行った結果、佐々木さんの木型通りに葉の形などがしっかりと描かれた、高さ4㌢ほどの釣鐘が完成。ただ、音の鳴りがいま一つだったため、佐々木さんが今後ひと回り大きい木型をつくり、地元産の鉧を用いて再度鋳造を行うことにしている。
 佐々木さんは「実際に鋳造作業を目にすることができたので、流れをつかめた。次の型では、もっと風鈴らしい音が出せるはず。こうして歴史をつないでいく活動は、いいことだと思う」と、今後に意欲をにじませる。
 高木会長(88)は「地元の材料で、地元の職人の腕が生かされたものになる。地域おこしの起爆剤になれば。完成後は多くの皆さんに音色を聞いてもらいたい」と話している。