製鉄技術明確化に期待、栗木鉄山で内容確認調査開始/住田町(別写真あり)

▲ 石積みなどがすぐに目にできる栗木鉄山跡内を確認する関係者=住田町

 住田町教育委員会による栗木鉄山跡の内容確認調査は4日、現地で始まった。10月まで、第一高炉や本社事務所跡、鋳物工場跡を調べ、歴史的意義の明確化などにつなげる。関係者は種山周辺の自然資源や地理条件を生かした第一高炉の炉底部分を明らかにし、近代的な技術を導入した足跡に迫る成果などに期待を寄せる。町教委は、平成33年度までの国指定文化財申請を目指している。

 

 国指定文化財見据え

 

 栗木鉄山跡の保存や国指定文化財を目指す動きでは、町教委が昨年度、調査委員指導会議を設置。委員は熊谷常正氏(盛岡大学文学部社会文化学科、委員長)小野寺英輝氏(岩手大学工学部機械システム工学科)小向裕明氏(大槌町教委生涯学習課)佐々木清文氏(前・埋蔵文化財セ)の4人で構成している。
 内容確認調査は、史跡範囲や各施設所在地の選定などを目的に、測量・図面化を行うもの。これまでの会議では▽第一高炉を支える柱跡を出し、高炉の規模を確認する▽本社事務所の範囲を確認する▽鋳物工場の建物規模を確認する──などを重点的に調べる方向性で議論が進められてきた。
 調査は7人体制で行う。この日は、調査従事者に加え小向氏と佐々木氏、町教委の佐々木喜之社会教育主事ら約10人が集まり、栗木鉄山内を歩いて概要を把握するとともに、作業に使う道具類を確認した。
 冒頭、小向氏は「10月まで、皆さんのお力を借りながら進めたい」とあいさつ。10年ほど前の試掘調査にもかかわった佐々木氏は「第一高炉周辺の炉底部分がきれいに出れば、構造が分かってくる。(近代前の)たたらの炉とどのように違うのかを明らかにしていくことが、国指定に向けても有効になる」と語った。
 引き続き、佐々木主事の先導で鉄山一帯を歩いて確認。純度の高い鉄鉱石を取り出すための「焙焼炉」跡や、第一高炉部分に今も残る炉の壁面部分の一部、石垣が残る本社事務所跡地などを巡り、種山の地形を生かして形成された「鉄の村」に思いを巡らせた。
 今後調査業務にあたる下有住の吉田義郎さん(67)は、「歩いてみて、範囲が広いと感じた。製鉄が行われていた跡や暮らしぶりを少しでも明らかにすることができれば」と話していた。
 栗木鉄山跡は、明治14年~大正9年の約40年にわたり稼働していた製鉄所。主に世田米の国道397号栗木トンネルの種山側に位置し、付近には大股川が流れる。鉄をつくる高炉が2カ所にあったほか、日用品をつくる鋳物工場、職員住宅、郵便局、購買所に加え、学校もあったとされる。
 最盛期の大正6年には、従業員は500人超に達した。銑鉄生産量は一時、国内4位(民間3位)を誇った。原料の鉄鉱石は、種山の奥州市側に位置する人首(ひとかべ)から採掘したとされる。
 江戸時代から蓄積されてきた製鉄技術や、立地環境を生かして操業。第一高炉については、製鉄史の中で大島高任式高炉の最終期を飾るとの位置づけもなされている。一方、栗木一帯は金も採掘された中、閉山後に各種設備は解体された。
 内容確認調査は、31年度までの計画。町教委は33年度までに、国に文化財指定申請を行う考えを示す。
 種山に構える各観光施設に近く、幹線道路沿いにあるため、利活用への関心の高まりも期待される。町教委は、住民をはじめ多くの人々に学びの場を提供できる環境整備推進も見据える。10月には、住民向け説明会を予定している。