中心地 にぎわいに手応え、まちなかの商業再生進む/東日本大震災発生6年半

▲ 買い物だけでなく、パブリックスペースの利用などで広く市民が訪れているアバッセたかた=高田町

 平成23年3月11日に発生した東日本大震災から、あすで丸6年半を迎える。陸前高田、大船渡両市の中心市街地で4月下旬、新しいまちの〝核〟となる複合型商業施設がオープンしてからは、約4カ月が経過した。大津波で大打撃を受けた商業エリア復興に向け、被災事業者らが本設店舗での営業をスタート。まちの新しい顔として堅調な滑り出しを見せており、店主らも一定の手ごたえをつかむ。同時に、ここで生まれたにぎわいを単なる〝開店景気〟としないため、今後はこの4カ月で浮かび上がってきた課題への対応が必要となる。

 

 複合型施設周辺で個店整備進む/陸前高田市

 

 陸前高田市高田町のかさ上げ地に整備された大型商業施設「アバッセたかた」は飲食、菓子、書籍・文具、100円ショップ、サロン、音楽教室といった13の店舗と市立図書館からなる専門店街のA棟、衣料量販店・スーパーマーケット等が入るB棟、ドラッグストアのC棟で構成される。
 4月27日の開業からおよそ4カ月。A棟を運営する高田松原商業開発協同組合(伊東孝理事長)によると、専門店街のレジ通過者数は、オープン直後の5月が3万3403人、お盆の帰省客や観光客が増える8月に3万165人と、3万人台を突破。6、7月はいずれも2万4000人台で推移した。7月の市立図書館オープンに伴う外部からの視察も多いが、見学者らも隣接店舗で土産などを買う傾向がみられる。
 「『被災地でお金を使いたい』という人が、わざわざ来てくださることもある」と話すのは、A棟のテナントの一つで、手芸用品などを取り扱う㈲スタイル(新山統代表取締役)の熊谷香理さん(42)。いわゆる〝震災特需〟は落ち込む一方といわれる中、応援の気持ちを持って買い物に訪れる人は、今も一定数いる。
 同店は高田町で被災後、竹駒町の仮設商店街で営業してきた。しかし、「仮設店舗の存在があまり知られていなかったようだ」といい、アバッセへ移転してから「スタイル、続けてたんだね」と言われることも。「仮設には目的を持って来るお客さんだけだったが、今はほかのお店へ来た人が立ち寄ってくれる」と話し、中心地の複合施設に入ったメリットを感じている。
 大型遊具がある「まちなか広場」が隣接することも、大きな利点の一つ。同公園に子や孫を連れて遊びに来た女性らが立ち寄るからだ。併設される市立図書館の利用者も多い。「アバッセ近辺が活気づいているという感じがしていい」と熊谷さん。平日も暇な時間はほとんどないと話す。
 大型商業施設周辺では個店整備が徐々に進む。6月にはその第1号として、居酒屋「公友館 俺っ家」が内陸から〝帰還〟。連日にぎわいをみせる。秋には4店舗で構成される「まちなかテラス」がオープン予定。建設中のカフェや服飾雑貨店の建物もその全貌が見えつつある。
 7月21日に開業した㈲ササキスポーツ(菅野修社長)も、アバッセの大型駐車場と本丸公園通りに接する区画で店を構える。スタイルと同様「仮設時代、来店するのは『用がある人』だけだった」と同店の松本正弘さん(49)。現在はふらりと入店する人が増えた。中高生が仲間と連れ立ってくる光景も、仮設では見られなかったものだという。
 課題は、立ち寄った人と購買行為を結びつけること。松本さんは「店外に特価品のワゴンを置くなど、買ってもらうための工夫が必要」と語る。
 高田松原商業開発協同組合の菅原香さん(45)は、「『俺っ家』に来た方が『アバッセにも飲食店があるんだ』と気づいて食べにきてくれるなど、それぞれのお店のファンを〝共有〟できるのが中心市街地の最大の魅力」と語る。まちなかへ来た人が市街地全体を回遊する流れが生まれつつあるとし、アバッセと個店の共存共栄を目指す。

 

 キャッセンは来客数の目標達成/大船渡市

 

集客増などにつなげようと、キャッセンでは親子向けイベントも開催=大船渡町

集客増などにつなげようと、キャッセンでは親子向けイベントも開催=大船渡町

 大船渡市では4月29日、大船渡町の津波復興拠点整備事業区域に、おおふなと夢商店街協同組合(伊東修理事長)による「おおふなと夢商店街」と、㈱キャッセン大船渡(田村滿社長)が運営する「キャッセン」が開業。夢商店街は18店舗、キャッセン・フードビレッジ(飲食店街)は12店舗、キャッセン・モール&パティオ(専門店と広場など)は17店舗が営業している。
 このうち夢商店街の伊東理事長(64)は来客数や売り上げ状況について、「お盆まではかなりよかったものの、8月20日ごろから落ちてきた。一般的に9月は落ち込みの時期にあたるが、売り上げや集客アップの仕組みを考えていかなければ」と気を引き締める。
 また、「開業後から1年間は、店舗ごとの営業を安定させることを重視したい」といい、「秋ごろからそれぞれが感じることを話し合いながら、30年度の事業に反映させ、持続できる商店街を目指していきたい」と話す。
 一方、キャッセンが2商業施設の開業後3カ月間(7月末まで)をまとめた概況レポートによると、来客数、売り上げともに当初の目標を達成。まちびらき期間(4月29~5月9日、駐車場の利用台数などをもとに算出)の来客数は延べ4万4000人と、目標としていた4万人を上回った。
 平時の店舗来客数(売り上げ報告があったテナントの月坪来客数に全店舗の床面積を乗じて算出)は、7月末現在で延べ8万7150人。平日は特定の店舗に寄る「目的買い」の来店者が多く、週末はイベント参加や緑地での休憩といった利用もみられる。飲食店が集積して回遊しやすいこともあり、夜間のにぎわいも堅調という。
 臂徹取締役(37)は、「これから1年間をかけてデータを集め、店舗の売り上げなどに直結させる取り組みを検討したい」と話し、「開店景気が終わったあとの不安、課題に対し、売り上げ増や営業に関する専門家の個別指導も行っていきたい」と今後を見据える。