図書館の「おはなし会」再開、本設オープンで約7年ぶり実施/陸前高田市(別写真あり)

▲ 市立図書館で再開された「おはなし会」=高田町

 陸前高田市高田町にある市立図書館(戸羽良一館長)で9日、同館主催の「おはなし会」が開かれた。東日本大震災の大津波で同館が全壊し、これまで休止されていた催し。7月にオープンした本設施設には、読み聞かせに対応するコーナーも設置されたことから、これからは震災前と同様、親子らが物語と出合う場が定期的に設けられる。

 

住民団体が協力し新体制に

 

 この日は「幼児・小学生向け」として約30分間、同館職員と同市の子ども読書支援グループ「おはなしぺパン」会員が、絵本の読み聞かせやストーリーテリングを披露。15人ほどの親子が児童書コーナーにある「おはなしの部屋」に集まり、物語や手遊び歌を楽しんだ。
 図書館主催の「おはなし会」は、発災前の平成22年まで定期的に開かれていたもの。同館はこのほかにも、読書イベント「おはなしらんど」を年4回開催。気仙両市の読書グループや人形劇サークルを招き、子どもたちが物語に触れる機会を積極的に設けていた。また「読み聞かせ講座」を開催し、読み手の養成などにも取り組んでいた。
 被災後は、仮設図書館に隣接する竹駒コミセンで、単発の「おはなしらんど」を催したり、読み聞かせ団体の交流会を開くなどしてきたが、施設再建を目指す中にあって、イベントを定期的に実施するには至っていなかった。
 高田町に整備された新施設には、靴を脱いで上がれるおはなしコーナーを整備。乳幼児を持つ母子らもゆったり耳を傾けられる環境が整った。「おはなし会」は同館職員と、震災前およそ20年にわたり会を担当してきたぺパンに加え、新たに読書ボランティア「ささ舟」も協力。市内のグループが連携した新しい体制で再スタートを切ることになった。
 今後は、月2回ペースで「幼児・小学生向け」「乳幼児向け」の定例おはなし会が開かれる。15日(金)午前11時からは、「乳幼児向け」の会を開催。当日は「ささ舟」が協力し、大型絵本やわらべ歌、手袋シアターなどを行う。予約や参加費は不要で、当日の参加を歓迎する。
 「市内のボランティア団体が図書館に協力するという、理想的な形で再開できる。またゼロからのスタートとなるが、少しずつ親子らに定着していってほしい」とぺパン代表の馬場幸子さん(58)。震災後、竹駒町のこども図書館「ちいさいおうち」が月2回おはなし会を開いており、そこへさらにもう2回、市立図書館の会が加わることで、子どもたちがおはなしや本に触れる場面が増えると期待を寄せる。
 本を貸し借りするだけでなく、市民の読書環境充実に資する内容を提供することも、公共図書館の重要な役割の一つ。同館司書の元木香代さんは、「まずは『図書館でおはなし会がある』ということを定着させたい。子どもだけでなく、お母さん方にも、おはなしに興味を持ってもらえるような会にできれば。今後は定例以外の読書イベントも企画していきたい」と話していた。