万一への備え 真剣に、高田一中で避難所運営ゲーム(別写真あり)

▲ 避難所の運営方法について話し合う生徒たち=高田一中

震災後初の本格防災訓練 

 

 陸前高田市立第一中学校(小野寺哲男校長、生徒247人)の生徒たちは12日、震災後初の本格的な防災訓練として、静岡県が開発した「避難所HUG」(避難所運営ゲーム)に初めて挑戦した。生徒たちはゲームを通し、次々に押し寄せてくる避難者、災害対策本部からのさまざまな指示、マスコミの取材依頼などに精いっぱい対応。避難所運営の大変さを実感したうえで、今回の疑似体験を万一への備えにつなげた。
 避難所HUGは、避難所運営をみんなで考えるためのアプローチの一つとして、平成19年に開発された防災ゲーム。ゲーム参加者は、避難者の年齢や性別、家族構成、国籍、それぞれが抱える事情が書かれた避難者カードを避難所に見立てた平面図に配置しつつ、起こりうる出来事が書かれたイベントカードに対応していくこととなる。
 これまでは生徒たちの心のケアを優先し、防災に関わる訓練は避難訓練のみにとどめていた同校。初めての取り組みであるHUG体験は、県教育委員会の本年度「いわて復興教育スクール」に指定されたことを受け、震災後初の本格的な防災訓練として企画した。
 生徒たちへの説明・指導は、1カ月前の職員研修でHUGを体験した教職員が担当。この際に教職員を指導した県教委の主任指導主事・澤口良夫さんも来校し、ゲーム終了後に講評を述べるなどした。
 はじめに、災害の規模、ライフライン、避難所である学校の被害、住民組織、天候、避難者の状況、備蓄品といったゲーム条件を確認。生徒たちは5人前後で1グループになり、指令本部、掲示係、誘導係といった役割分担を考えながら、息つく間もなく読み上げられる避難者カード、イベントカードに対応していった。
 中には、「お年寄り 1階へ」「けが人 保健室へ」といった掲示を行い、避難者がどこへ向かえばいいか分かりやすくするグループも。イベントカードでは、支援物資として提供された毛布を荷下ろしする場所の確保、校内で立ち入り禁止にすべき場所の指定などが指示されたほか、避難者からの要望・苦情にも対応することとなった。
 澤口さんは1年生に対する講評で、「答えは一つではないので、いろいろな意見が出てくる。みんなで話し合い、違う考えを聞くことこそ大切だとみなさんを見ていて勉強になった」と評価。〝防災で大事な言葉〟として「自助・共助・公助」を紹介したうえで、「中学生のみんなは、子どもやお年寄りを助ける共助の力を持っている」と期待を寄せていた。