伐採ツバキ回収します、三面椿の会有効活用へ/大船渡市

▲ 伐採ツバキを活用した椿灰とこれを利用した焼き物を手にする山下さん=末崎町

 大船渡市「三面椿の会」(志田隆人代表)は、東日本大震災後の新たなまちの整備などに伴い、伐採、処分せざるを得ないツバキの木を回収している。成長が遅く、年輪が細かいツバキ材は木工品や炭に適し、灰は染色剤、陶芸用の触媒にも用いられる。同会では「どうしても切らなければならないツバキがあれば、活用のために譲ってほしい」としており、地域資源としてのツバキの有効活用を通じ、県指定天然記念物の三面椿(末崎町)を守る活動などにも役立てていきたい考えだ。

 

 処分する木を資源に

 

 三面椿の会は、市内の住民組織「三面椿を守る会」の意志を受け継ぐ形で活動。末崎町内に搾油所を開設し、気仙各地で集められたツバキの実の回収、非加熱方式(コールドプレス)によるつばき油の製造などに携わっている。
 ツバキは花を楽しむだけではなく、実からはつばき油、葉からはお茶、幹や枝からは木工品、炭、灰などができ、余すところなく活用が可能。成長が遅く、年輪が細かいために木工製品に適し、灰はきめ細かいものになるという。
 日頃市町の山下哲夫さん(71)は一昨年、市内で伐採されたツバキの枝木を譲り受け、地元の高齢者らの協力も得ながら〝椿灰〟を作った。椿灰は枝木を燃やした灰をふるいにかけて作るもので、染色用の媒染剤や陶芸の釉薬(うわぐすり)などに用いられる。
 出来上がった椿灰は、三面椿の会のメンバー、ロータリークラブの活動で知り合った栃木県益子町の藍染工房などに贈呈。同会メンバーの1人がこれを釉薬として用い、山梨県内の工房で焼き物を制作してもらったところ、透明感のある緑がかったグレーが美しい作品に仕上がった。
 山下さんは、自ら手がけた椿灰から美しい陶器が生まれたことに驚き、満足。その一方で、「復興事業の造成工事でツバキの木が結構切られており、中には樹齢400~500年のものが伐採されたところもあると聞く」と話す。三面椿の会によると、伐採されたツバキの木は、そのまま廃棄処分となるケースが多いという。
 同会ではこの件に着目し、やむを得ず伐採、処分されるツバキの木を活用したいと回収に着手。譲り受けた木は状態を見て、幹の部分などは木工品に用い、枝は炭に、端材や細い枝部分は灰に加工していく考えだ。今後は、灰などに加工するための焼きがまも設置する予定という。
 山下さんは、同会のこうした動きに期待。日本最古のヤブツバキとして知られ、年々傷みが激しくなる中で修復、保存のあり方が重要視されている三面椿に思いを寄せ、「修復しなければ大変なことになる。処分されるツバキを生かして灰を作り、売れるなら売ってその修復に生かせれば」と願う。
 同会では加工したツバキを商品化し、三面椿を守る活動に生かしていくことも視野に入れる。回収するのは、切ったばかり、または近く伐採予定があるツバキ。伐採後に放置したままで腐食が進んでいるものなど、引き取れない場合もある。回収は無料で行う。
 問い合わせは、同会の山田康生さん(℡090・3345・4411)へ。