3市町で57人が避難、台風18号接近の気仙(別写真あり)

▲ 氾濫危険水位を一時超えた盛川の権現堂橋付近。雨がやんだあとも水位の高い状態が続いた=大船渡市

 大型の台風18号が接近した影響で、気仙地方も17日夜から18日早朝にかけて強い雨と風に見舞われ、3市町で合わせて57人が避難所に身を寄せた。今月12日にも大雨があったばかりで、今回も各地の低い土地では道路の冠水が相次ぐなどしたが、18日午後5時現在で人的被害や住宅への浸水などは確認されていない。収穫期を控えるリンゴをはじめとする農作物や海のカキなど養殖ものへの影響も懸念されており、今後、被害状況の調査が行われる。

 

先週に続き冠水相次ぐ

 

通行止めが解除となった国道45号沿いでも冠水が続いた=陸前高田市

通行止めが解除となった国道45号沿いでも冠水が続いた=陸前高田市

 台風18号は日本列島を縦断するように進み、気仙では17日深夜から18日早朝にかけて大荒れの天気となった。
 18日の1時間当たりの最大降水量は、午前1時前後に大船渡市で49・5㍉、陸前高田市で34・5㍉、住田町で19・0㍉をそれぞれ観測。17日午前6時の降り始めから18日同までの降水量(アメダスによる速報値)は、大船渡市で132・0㍉、陸前高田市で122・5㍉となった。
 日最大瞬間風速は18日午前5時30分~同6時30分ころにかけて記録し、大船渡市で21・8㍍、住田町で19・7㍍、陸前高田市で18・9㍍。同市は、1時間降水量、最大瞬間風速ともに9月の観測史上最大を更新した。
 大船渡市と陸前高田市には暴風、波浪、洪水、大雨の各警報、住田町には大雨警報が順次発表された。午後5時現在、両市の波浪警報以外は解除、もしくは注意報に切り替わった。
 この中、県は17日午後0時30分に災害警戒本部を設置。その後、大船渡市、釜石市、大槌町への洪水警報発表を受け、災害特別警戒本部に移行。岩泉町などに大きな被害をもたらした昨年の台風10号を教訓として今年6月に設置した、県や盛岡地方気象台、学識経験者らによる「風水害対策支援チーム」を初招集。市町村に対して早めの警戒体制構築や避難情報発表を呼びかけた。
 大船渡市は17日午後5時、市内全域に避難準備・高齢者等避難開始情報を発表し、地区公民館単位の11地区に避難所を開設。18日午前1時15分には土砂災害警戒情報の発表に伴い、市内全域に避難勧告を出した。同午前2時20分には盛川の水位が氾濫危険水位を超えたとし、日頃市町の長安寺・板用地域に避難を呼びかけた。
 避難勧告は土砂災害警戒情報の解除に伴い、同午前10時に解除。市によると避難所には同午前2時~5時30分ごろにかけ、盛、大船渡、末崎、猪川、立根の5地区で最多の29人が身を寄せた。
 市によると、人的被害の情報は入っていない。県道丸森権現堂線(地ノ森~新田付近)、市道茶屋前山馬越線、市道野々田川口橋線、盛川右岸線では冠水が発生。国道45号(三陸道大船渡北IC付近~立根町細野地内)では土砂流入、三陸町綾里小石浜地内の主要地方道大船渡綾里三陸線では倒木があり、いずれも一時通行止めとなったが解除された。
 また、日頃市町大森地内の市道沼川大森線では土砂崩れが起きた。通行止めとなっており、18日午後3時現在で解除のめどは立っていないという。
 農漁業被害は市が情報収集にあたっているが、詳しい確認は19日以降になるとしている。
 陸前高田市では17日午後4時、市内全域に避難準備・高齢者等避難開始を発表し、市内10カ所のコミセンなどに避難所を開設。18日午前1時40分、土砂災害の危険性が高まったことから、小友町、広田町、気仙町に避難勧告を発表し、小友地区では門前会館を避難所に追加した。
 避難所には最大で15世帯25人が避難。同午前9時25分に土砂災害警戒情報が解除されたことから閉鎖した。
 道路は、国道45号の気仙町星石油付近~米崎町沼田交差点までのおよそ3㌔が冠水。国道340号アバッセ入り口~国道45号交差点、高田町の県立高田高校付近~海浜館付近、小友浦干拓付近~三日市地区も冠水のため通行止めに。市道一中1号線の鳴石側も土砂崩れのため通行止めとなった。
 国道45号と同340号の交差点付近にある気仙町の一本松茶屋では、土産品販売の「たがだ屋」をはじめ、ラーメン店やカフェなどが休業を余儀なくされた。
 農業では収穫を間近に控えるリンゴや水稲への目立った被害はなかった。米崎町のリンゴ農家は「ナシはいくらか落ちたが、リンゴはほとんど無事だったようだ」と胸をなでおろしていた。
 住田町では17日午後5時、町三役と大船渡消防署住田分署、町消防団で対応を協議。同午後7時に警戒本部を設置し、町内全域の2207世帯、5706人に避難準備・高齢者等避難開始情報を出した。
 町内5カ所には避難所を開設し、世田米の町役場に2人、下有住地区公民館に1人が避難。いずれも1泊し、避難準備情報が解除された18日朝に自宅に戻った。
 町内では斜面からの水が道路に流れ出る場所が散見されたが、通行止めはなし。大股川の高屋敷、気仙川の昭和橋での水位観測はともに水防団待機水位までは至らなかった。
 JR大船渡線BRTと三陸鉄道南リアス線は、いずれも始発から運転を見合わせた。
 三鉄は午前10時30分すぎから運転を再開。BRTは運休が続いた。県交通の路線バスも運休などの措置をとった。
 東北電力岩手支店によると、県内では延べ1万2472戸が停電。気仙では大船渡市猪川町善蔵敷で、倒木の影響とみられる停電があったが、18日午後2時までに復旧した。
 台風は、19日にはオホーツク海で温帯低気圧に変わる見込み。盛岡地方気象台の予報では、同日の沿岸南部は高気圧に覆われて晴れ、日中の最高気温は大船渡で26度、海上の波の高さは3㍍のち1・5㍍でうねりを伴う。