蔵の保存活用推進へ、住民意識醸成に向け新機軸/住田町

▲ 古き良き景観を形成する昭和橋周辺の蔵並み=世田米

 住田町は今月から、町内の古き良き景観を支える蔵の保存・活用に向けた新たな取り組みを進める。21日(土)には「蔵史を聴いて暮らしに生かす」と題し、専門家を招いたパネルディスカッションや気仙川付近の「蔵めぐり」などを予定。29日(日)開催の町産業まつりでも、相談スペースなどを設ける。蔵の価値に対する住民意識の醸成や、新たな利活用につながるか注目される。

 

 21日に「相談会」初開催

 

 同町世田米の昭和橋周辺などには土蔵が多く現存し、対岸から見える蔵並みは住田を代表する景観として親しまれてきた。世田米商店街沿いに点在する蔵も、音楽愛好者の活動拠点として活用されている。
 町は平成26年度に策定した町中心地域活性化基本計画で、町並み保存とまちづくり構想を打ち出している。その一方で、多くの土蔵では本来の倉庫としての機能を失い、有効活用されないまま放置・解体される現状も見受けられる。
 町は、住民らが蔵の希少価値を再確認して蔵に対する誇りを持つとともに、住民交流拠点施設・まち家世田米駅の蔵を含む町内各地の蔵を保存・活用することで交流人口拡大につなげたい考え。取り組みの第1弾として、21日午前9時30分から、まち家世田米駅の蔵ギャラリーでシンポジウム「住田の蔵の相談会」を開催する。
 パネルディスカッションでは、コーディネーターに薩田英男氏(建築家、㈲薩田建築スタジオ代表)を招く。パネリストは藤田洋三氏(蔵の鏝絵研究家、写真家、ライター)、小林隆男氏(左官、江州左官土舟代表)、小林澄夫氏(雑誌「左官教室」元編集長)のほか、蔵所有者の登壇も検討している。
 藤田氏からは日本の蔵文化や土蔵などにしっくいで描かれる鏝絵についての解説を、パネリストからは蔵の文化的価値や保存活用方法に関する発言が予想される。蔵保全に関する悩みや疑問を受け付ける時間帯を設けるなど、参加型のイベントとする。
 終了後は、希望者を対象に気仙川付近の「蔵めぐり」を開催し、住田に立ち並ぶ蔵の特徴などに理解を深める。また、住民らから事前に申し込みがあれば、所有する蔵をパネリストらに見てもらう時間も設ける。
 29日に役場で開かれる産業まつりでは、相談会に加え、子どもたちに蔵の材質にふれてもらおうと「土団子づくり」を企画。小林氏と薩田氏のほか、近畿大学建築学部助教の山田宮土理氏がアドバイスする。
 まち家世田米駅として利用されている旧菅野家住宅及び土蔵群計6棟は今年、国の登録有形文化財(建造物)に指定された。世田米の景観を象徴づける主屋は構造や部材を生かし、レストランや地区公民館として利用され、交流人口増につながる拠点となった。
 また、敷地内にある蔵4棟のうち1棟は現在、ギャラリーとして利用されている。残りの3棟のうち主屋に隣接する1棟は、壁と屋根瓦の境界部分にあたる「鉢巻(はちまき)」と呼ばれる部分が広く、蔵としての格の高さを示しているとされる。
 その一方、傷みが進んでいることから、今月から安全対策に着手する方針。町はこうした取り組みも示すことで、蔵を再活用する動きにつなげたい考え。
 シンポジウムや産業まつり会場での催しは、参加の申し込みは不要。町外在住者も参加可能で、町では「気軽に来場を」と呼びかける。問い合わせは、町企画財政課企画係(℡46・2114、ファクス46・3515)へ。